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Futsal Philosophy (フットサル・フィロソフィー)

12 2月

2017/2/12(日) Fリーグ第32節 町田市立総合体育館 『お尻の価値』

2017/2/12(日) Fリーグ第32節 町田市立総合体育館
府中アスレティックFC 2 - 1バサジィ大分
ペスカドーラ町田 5 - 2シュライカー大阪

サッカーのユニフォームや、F1のボディにペイントされたロゴなど、プロ・アマ問わずスポーツでは協賛やスポンサー企業の企業名や、企業が推す商品名を背負って競技を行う光景をまま目にする。

競技を行う上でのギア、競技力向上のための食事、練習場、移動、試合の登録費、会場の確保、試合前後を含めた会場運営や広報など、個人、チーム、運営団体といったそれぞれの立場でスポーツにはとかくお金がかかり、その一助を担うのが広義で言うところの『スポンサー』だ。

スポンサーは対価と引き換えに個人、チーム、競技を通して自社(あるいは個人)を宣伝してもらえる権利を得、ユニフォームやスタジアムへのロゴや看板の掲示、企業名/商品名の入った冠ゲームの開催などで露出を増やす。

意思決定層が競技の愛好家であったり、支援対象の選手の熱意に意気を感じたりということがスポンサードのきっかけとして一般的だが、マイナーだがビジュアル的にキャッチーな競技だったり、社会貢献性や意義の高い大会、共感できるストーリーを持つ選手など、場合によってはスポンサードしていること自体が好意的なイメージに繋がることもありブランディングとしても有効な手段といえるだろう。

単純にロゴを貼り付けただけでなく大相撲では力士が巻く化粧まわしでは熊本県のPRキャラであるくまもんや、よーじやのあぶらとり紙のトレードマークである女性の影絵が登場したりと、単純なデザイン性だけでなく『強さ』や『真摯さ』の象徴でもある力士が脱力系のキャラクターや女性向けの商品の訴求を行うという意外性がまた目を引くものがある。

最近なにかと飽和状態の『●●女子』のひとつである相撲女子に向けてのマーケティングだろうが、厳粛な国技館のランウェイを精悍な力士が土俵上では少々不釣り合いな化粧まわしを巻いてを歩き、土俵というステージで大相撲の花形の所作である四股のポーズをキメる光景はどこかファッションショーにも似て非常にユニークでありアピールの効果は抜群だろう。


シャツ&パンツのユニフォームで競技を行う一般的なスポーツでここ最近増えてきたのがお尻への広告だ。

一般的には胸→背中→袖・パンツ(腿の前/お尻)の順に掲示金が高くなり、テレビや写真で見る姿はバストショットが多く金額通りに胸のロゴが目立つものの、選手のプレーの動作の終わり(走る/飛ぶ/打つ/蹴るなど)は上屈してお尻が突出しているポーズが多く、鍛えられた見事なお尻に貼られたロゴやマークがピンと伸びて『おお...。ここにもロゴがあったか(しかしディドゥダはいいケツしてるぜ(照))』と感嘆することがままある(私だけかもしれないが)。
 
情報元により諸説あるがJ1の年間の掲示料は胸が2~3億円/背中が1億円/袖・パンツが5千万円(J2はその半額程度)と言われており、TV中継は少ないが、会場にはそこそこ客が入りコアなファン層が支える構図になるマイナースポーツのスポンサーになるならお尻のスポンサーはそこそこ魅力なのではと思う。


『どこで』『だれが』『どこに』のユニークさが際立っていたのが前述の化粧まわしの例だが、数年前からお尻の部分にスポンサー企業の『ネピア』のロゴが入るようになったエスポラーダ北海道のユニフォームはなかなかインパクトがある。

フットサルのトップリーグが行われる体育館で北海道出身の爽やかな選手たちがお尻にティッシュやトイレットペーパーを主力商品とするネピアのロゴを入れて戦うところにシリアスとコメディーのギャップがあり、シャツ&パンツのスポーツはシャツをパンツの外に出してプレーしがちだが、北海道の選手はお尻のロゴを見せるためにシャツをパンツに入れてプレーしており印象的にも非常に良い(シャツをパンツの中に入れることをキチンとした所作であると評価する古いファッション観かもしれないが、そういった価値観を持つ層は一定数存在する)。

『どこに』と訴求商品のギャップやマッチを生み出しやすいのがお尻の広告の魅力であり、価格的にも安価なことから比較的営業しやすいのではとも思う。
ポライトなユニフォームな着こなしがイメージアップにも繋がるという2次効果も期待できるのでまだ入っていないチームはゼヒ営業してほしいところだ。

そんなスポンサーとスポーツの関係だが、昨年あるチームが行ったスポンサーマッチデーのプログラムの中で新加入選手のインタビューがあり『スポンサー企業についての印象は』という質問に『移籍してきたばかりでよくわからない』という回答が掲載されていてちょっとガッカリしてしまった。
ほかにも意味不明で目にするとなんとも言えない気持ちになるが、お尻にスポンサーのロゴが入っているのに入場時からシャツをパンツの外に出して入場してくる選手がいたりする。

ないよりあったほうがなにかとよいのがお金であり、即効性の高いのがスポンサーマネーだが当然そこには対価を要求される。
 
それがプロスポーツの常識だ。

前述のインタビューの選手は実力はありながらもチームを転々とした苦労人タイプであり、シャツをパンツの外に出している選手は十分ネームバリューもある選手だったりで、単純に素直なだけのような気もするが、結果や行動ですべてを判断されるのが見られる立場の人間であり、直接的であれ間接的であれ自分に関わってくれる人に対する言動を想像できることがスポーツ選手云々の前に社会人として必要なことだろう。
 
インタビューの内容に対するチェックがなかったのかチェックの上でゴーサインを出したのかはわからないが、選手だけでなくチームが所属選手のマッチデープログラムの言動に無関心なのもどうかと思うし、SNSでゴハン食べに行きました写真をアップするチームメートはいてもユニフォームを出していることを注意する仲間はいないのかと少々心配になった。

以前は観客数が1,000人を下回ると少ないと感じていたが、ワールドカップの出場権を逃し、Bリーグという強力なアリーナスポーツが華々しく誕生した今期は500人前後の観客数の試合もザラにあり、フットサルがメジャーになってほしいという想いよりもなんとか現状維持をという焦燥感が強い。
それでも自分が観られる立場であり、観客、スポンサーを楽しませ、応援することを誇りとして感じてもらえる存在であると意識し、それに沿った振る舞いをしようという気概がなくなったら終わりだろう。

フットサル界は2016年に長年全日本選手権をサポートしたPUMAが、Fリーグからは開幕からの付き合いである森永製菓がそれぞれ冠スポンサーから撤退したが、前述の北海道のように地域に根差して観客動員数を伸ばし、地元企業のスポンサードを獲得する好循環を生んでいるチームもある。

今期は大阪がブラジルトリオと質の高い日本人選手を揃えて名古屋の10年連続のリーグ1位をハッキリとした実力差を見せて阻んだ。
量より質の密度を高めて得た経験値の蓄積で相手を上回る少数精鋭型の木暮采配が異彩を放つ大阪だが、彼らの群を抜く強さの裏にはハッキリとしたリリースはないもののそれを支える金銭面での充実もあるのではと思う。

ニワトリが先かタマゴが先かの不毛な議論になりがちだが強化にはお金が必要で強力なチームが増えることがリーグや代表のボトムアップに繋がる。
景気のいい話は皆無といっていい日本フットサル界だが、お尻のスポンサーロゴが入るチームが増えることがひとつのバロメータになるのではと勝手に思っている。

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日本を代表するドリブラー、仁部屋選手。
華麗なスラロームを支える形のいいお尻に輝く地元大分の不動産企業『豊後企画集団』の広告はインパクト大。
大分はユニフォームとロゴの色見の相性も◎。
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強烈な炸裂音を響かせるシュートと、正確で球足の速いインサイドパスを操る大分の大型フィクソ、ディドゥダ選手。
ヴィニシウス、ボラ、ディドゥダらブラジル人独特のクイックネス/テクニック/パワーを生む彼らのムッチリとしたお尻は説得力抜群。
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5位でのプレーオフ進出を決めた府中。
クラブの初期を支えた上澤選手の7番を着る若干20歳の内田隼太選手は前半2分間の出場ながら機を見て斜めに抜ける動きでゴレイロとの1対1のチャンスを作る。
J1で絶賛売り出し中の鈴木優麿と同期の鹿島アントラーズの下部組織出身で今後に期待大。 
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2020年ワールドカップの主役後方の左利きドリブラー加藤選手を全治9カ月の重傷で欠き、ヴィニシウスとチアゴも不在。
飛車角金が抜けた大阪もこれまた20歳の仁井選手がセットに入って活躍。
左サイドの定位置からスタートする決めごとタップリな大阪のオフェンスを見事にこなす。
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2年前のプレーオフで頭角を現した田村選手がゴール前のセットプレー、相手エースの森岡選手のマンマークに体を張るも、森岡選手もゴールに繋がるプレーでやり返す。
今シーズンの決勝でこのマッチアップも十分ありそう。
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この日出場した唯一のブラジルトリオ、投げやりなアウトサイドキックにも風格が漂うアルトゥール。
体の厚みとリーチを活かして相手にアタックできないところにボールを置いて攻守のタクトを振る。
今期のMVP最有力候補。
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シーズンごとに若手が活躍する町田。
日本代表にも初選出された前線のプレスマシーン、原選手は今日も元気一杯。
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中央とサイドではスピードを活かしてハイテンションな攻守を見せ、ゴール前では周囲を見て冷静な落しを選択する町田の次代のエース。
森岡選手との好連携で1ゴール2アシストの中井選手は俺の尻でチームを引っ張るとばかりにユニフォームの着こなしもバッチリ。
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今期で引退する日本フットサル界のレジェンド、44歳の甲斐選手の引退セレモニー。
大阪の選手も交じっての胴上げに胸が熱くなる。

23 1月

2016/11/26(土) 国際親善試合 MFP味の素スタジアム 『ウサギとカメ』

2016/11/26(土) 国際親善試合 MFP味の素スタジアム
ファイルフォックス府中 5-4 トルクメニスタン代表

※こちらからの続きです:2016/11/23(水) 国際親善試合 郷土の森府中市立総合体育館 『外国人の視点』

2016年11月17日~11月30日までの14日間日本に滞在するトルクメニスタン代表だが11/27(日)が唯一のオフとのこと。

東京近郊での行きたい観光スポットを選手に聞いたところ、意外にも忠犬ハチ公のエピソードにいたく感動したらしく渋谷のハチ公像を見たいというリクエストが多いらしい。
試合中はファイター気質の選手が目立ち、テンションの高い一対一で勝負する彼らだが、衣食住には困らず自然も豊かで鎖国状態の牧歌的な国が儒教的な感覚を持っていたとしてもあながち驚かない。

どこかで見た今風な若者たちがたむろするスポットで、主人の死後も彼を待ち続けたハチ公を尊敬してトルクメニスタンの若者たちが集合写真を撮っている様子を想像し、ちょっと微笑ましい気持ちになってしまった。

先制されるも粘り強い守備と少ない攻撃の手札で勝ちを拾ったリガーレ東京との初戦。
前後半開始時の集中力のエアポケットを一気に突かれ、終始主導権を握られてクローズされたすみだとの2戦目。

中2日の3戦目は関東1部のファイルフォックス府中。
プレス&カウンターもあり、フロアに人を広く配置してから縦パスを機に一気にラッシュする定位置攻撃も強力。
セットプレーやパワープレーにも見る物が多く、今年の関東1部リーグを準優勝した引き出し豊富なフットサルらしいフットサルをするチームを相手にどんな試合になるのかが非常に楽しみだった。

試合はすみだ戦と同様、集中力を欠く前半早々にキックインからのチョンドンとカウンターで2失点。
すみだ戦と同じく立ち上がりにフワフワする悪癖でビハインドを負うも、ここからトルクメニスタンが厚みのあるフィジカルを活かしたディフェンスで盛り返し、強烈なシュートと突進→切り返しに迫力のあるドリブル突破を活かして同点に追いつくと、ボールカットから3人が駆け上がっての3v1カウンターを決めて前半を2-3のリードで終えた。

後半、オフェンスに過重したファイルのボールをいい形で奪うとそのまま2v1のカウンターに出る。
これを手堅く決めて2-4としグッと勝利を引き寄せたかに見えたが、2点のリードの余裕でこれまでのテンションが緩んだのか、ここからディフェンスラインが下がり、相手に強く当たれなくなると徐々にファイルペース。

サイドから入れられたボールをクリアしきれずにボールがパチンコ式にゴールに収まる形でのオウンゴールで3-4。
残り8分過ぎからファイルがパワープレーを始めると、不慣れなディフェンスを早々に攻略されて4-4の同点。
その後もファイルがパワープレーを継続すると、終了間際に素早い動かしで作ったズレを活かしてファーからのシュートを決められて5-4。
後半に作った2点のリードの甘みはどこえやらのホロ苦い敗戦となった。

今シーズンは準優勝に輝いたものの、一昨年は優勝、昨年は9チーム中8位で関東2部との入れ替え戦という落差の大きいシノギを余儀なくされたファイル。

昨シーズンはセット間の温度差と、試合中に激昂する吉成選手兼監督の姿がチームの状態をよく表していたが、この日は後半に試合中に頭を打って退場した西川選手を全員が気遣う。
 
なかでも印象的だったのが、FPでは最年長の吉成選手兼監督が内容はアツいものの、です/ます調の丁寧な言葉使いでメンバーに指示を与え、その指示を各自が真剣に話を聞いていたことで、昨年との結果や温度感の違いはここに集約されているように見えた。

今シーズン、Fリーグから復帰した藤本選手、三木選手、曽根選手がトップカテゴリーでのスキルと経験をチームに還元しての好成績とも取れるが、チームの得点は10点の町田選手がトップで、以降は吉成(9)、三木(7)、西川/丸/小原/藤本(5)、曽根(4)、長尾(3)、田辺(2)、江良/真部/三ヶ尻(1)と満遍なく続いていることが示すようにチーム内のバランスは非常に良さそうだ(もちろん3選手の経験、スキルがバランスの構築に大きく貢献していると思う)。

チームは生き物であり、1シーズン、1試合という単位だけでなく、試合中の得点差/ファウル数/出場メンバー/時間帯で必要なスキルや情報は大きく異なる。
各場面で適切なコミュニケーションは毎回異なり、どういった雰囲気作りや声掛け、姿勢を示すかも監督が考えなければならないタスクだ。

後半2-4にされてからチグハグになったトルクメニスタン代表攻略戦でメンバーに指示を与え、猛追、逆転した吉成監督の手腕はお見事で、2失点を逆転して2点を勝ち越しも、徐々に盛り返されてパワープレーで敗戦というフットサルらしい難ゲームを体験できたことはトルクメニスタンも嬉しい悲鳴だったろう。


細かい例外はあるがフットサルは、

①プレスラインの設定とプレス回避
②トランジションの強度
③練度とキャラクターのある2セット
④キックイン、フリーキック、パワープレーなどのデザインプレーの攻守

の4点のどこかで相手を上回って多くゴールを決めたほうが勝つスポーツだと思う。
3戦だけだがトルクメニスタン代表を評するなら、

①プレスが利いている時間もあるが、プレス回避はまだまだ。

②攻撃→守備の切り替えとボール奪取までは◎。
守備→攻撃の切り替えは△だが、各局面で何人まで人数をかけるのかを検討中といった感じでドリブルでの持ち出しはかなり迫力がある。

③3セットでのローテーションを採用。
どのセットも2人以上の連動での攻撃は非常に少ないが、1試合で数回はよい形も見せ、ポテンシャルはありそう。

④強シュートと体格を活かしてのブロックを駆使したキックイン、フリーキックの攻撃は◎。
パワープレーディフェンスは△で、リードを奪ってもここがお留守だと強豪相手には絶対に勝てないので直近の必修科目か。
パワープレーオフェンスは今後の他戦術の習熟度を見ながら練習時間との相談になりそう。

となり、率直に言って関東1部の中位~下位程度の実力だろう。

だが、AFCではベトナムが日本を破ってワールドカップに出場し本大会では決勝トーナメントに進出、史上最強との呼び声もあった日本を敗者復活トーナメントでキルギスが2-6で敗るなど、継続的な強化(あるいは強化の不足)や勝負の波はどんな結果を生んでも不思議ではない。
そしてトルクメニスタン代表は2017年9月に同国で開催が予定されているアジアインドアゲームズまで、日本から派遣された中村氏、前川氏の指導の元、継続的にトレーニングキャンプや親善試合をミッチリ続けていくとのことで、短期間で一気に伸びる可能性は大いにある。

日本では名監督と聞くと試合中に絶妙な選手交代や、奇抜な采配でゲームを動かす勝負師を連想しがちだ。
だが、最も大事なのは自分が率いるグループに今何が必要かを考え、各自が理解し、納得して行動できるように伝え、人間関係を構築していくことで、『妙手』や『奇手』はあくまでその過程で生まれたものでしかない。

2016年2月のAFC敗退し、10月にブルノ・ガルシア氏が代表監督に収まったが数回の選考合宿が組まれただけで、JFAがリリースしたスケジュールでは2017年に国内で日本代表のお披露目の場はなく、3月の2週間の海外遠征と6月の1週間の合宿後に9月のアジアインドアゲームズに向かう。
 
ワールドカップで3位に輝いたイランがロシアを相手に親善試合を行い、タイ、ベトナム、オーストラリアを含むワールドカップに出場したアジアの列強がAFF(ASEAN諸国を集めた地域大会)の連戦を戦うなど、各国が勢力的にトレーニングマッチを行っているのに対し、自称イランのライバルである日本の強化日程は非常にお寒いもので、こういうスケジュールについても代表監督は(常識的に結果を出せるプランではないのですでに言っているかもしれないが)ドンドン文句を言っていってほしい。

3/23(木)~4/4(火):海外遠征(未定)
5/30(火)~6/4(日):トレーニングキャンプ(兵庫)
9/17(日)~27(水):アジアインドアゲームズ(トルクメニスタン)
10/16(月)~18(水):トレーニングキャンプ(未定)
11/1(水)~11(土):AFC フットサル選手権2018予選(未定)

日本には色々なタイプの優れた選手がいる。
試合展開、パーソナリティに合わせたアプローチができる優れた監督もいる。

惜しむらくは彼らが国際経験を積む舞台が非常に少ないことで、アウェーでの戦いは勿論大事だが、自分のナショナリティを再認識し、代表選手としてのプライドを育てる国内での親善試合も絶対に必要だろう。
 
国外から優れた指導者を招聘し、海外武者修行に励むトルクメニスタン代表はかつて日本が歩いた道程だろうし、国を挙げて強化に励む彼らが2020年、2024年のワールドカップ出場を賭けた戦いで日本に立ちはだかる可能性は決して低くない。

海外からの観光客が増え、彼らの指摘の元、当たり前のものとして見飽きていた日本の良さ、悪さを我々が再認識するということがままある。

・選手たちの謙虚さ
・監督と選手の信頼関係
・タイプの異なる対戦相手との腕試し
・協会からの適切なバックアップ
 
ベトナム戦、キルギス戦で特に顕著であり、AFCで顕在した日本のウィークポイントはもちろんどのチームも潜在するものだが、それを埋めるためのアプローチをする時間や機会は絶対的に足りていない。

昨年のAFCを名古屋が制し、その名古屋を今シーズンは大阪が圧倒している。
この状況を見てもFリーグのレベルが低いとは決して言えないが代表チームはまったくの別物で、今年9月に行われるアジアインドアゲームズの日本とトルクメニスタンの成績が、ウサギとカメの童話よろしく、目標へのアプローチとして何が正しいかを示すひとつのバロメーターになるはずだ。

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16 1月

2016/11/23(水) 国際親善試合 郷土の森府中市立総合体育館 『外国人の視点』

2016/11/23(水・祝) 国際親善試合 郷土の森府中市立総合体育館
フウガドールすみだ 5-2 トルクメニスタン代表

※こちらからの続きです:2016/11/22(火) 国際親善試合 MFP味の素スタジアム 『トルクメニスタンという国をご存知だろうか』

リガーレ東京戦の翌日、トルクメニスタン代表は町田市立総合体育館でFリーグを観戦。
会場を見渡すと府中サポーター席の横の一角が関係者席になっており、同エリアに緑色のジャージを着たがっしりした体躯の青年たちが折り目正しく座っていた。

プチセントラル開催となったこの日は2試合が行われ、1戦目の府中対大分は府中が2点リードから大分が巻き返して2-2のドロー。
2戦目の町田対大阪は同じく大阪が2点リードから町田が盛り返して後半6分までに3-4と追い詰めるも、最期はブラジルトリオが試合を決める活躍を見せ(ヴィニシウスが4点、アルトゥールとチアゴが2点)4-8でホームの町田を粉砕した。

ビザの取得が困難なトルクメニスタンでは外国人を見ることは稀だろうし、スポーツをライブで観戦することが娯楽として定着しているかはわからない(ロシアのTVは受信できるということなので一通りのメジャースポーツは見れるらしい) 。
皆本選手、仁部屋選手が個人技で違いを作り、クロモト選手、ディドゥダ選手が要所を締め、森岡選手が抜け出してシュートを撃ち、アルトゥール選手が常識では考えられないレンジからロングシュートをぶちかます。
その様子を1,700人の観客が見つめ、ワンプレーに一喜一憂する。

近年、日本のニッチなスポットが海外からの観光客に人気で、当たり前のものとして見飽きていたり、イロモノとして敬遠していたものを彼らのクチコミを機に再発見するということがままある。

外国人観光客向けの観光情報を多く発信するポータルサイト、トリップアドバイザーではちょいちょい日本人も知らないような名所が訪日外国人の人気観光スポットして取り上げられることがあり、彼らのリコメンドを頼りにそこに行ってみると意外なほど面白い。
先入観にとらわれない純粋な視点というのは侮れず、ブレイクのきっかけを逃して徐々に観客動員が落ち込みつつある10年目のFリーグの試合と会場の雰囲気を彼らがどういう気持ちで見つめていたのかがとても気になった。



町田での2試合が18時過ぎに終わり、府中市立総合体育館に移動して21時からはフウガドールすみだとトレーニングマッチ。

FPに田口選手、ゴレイロは清家選手、揚石選手、大黒選手とトップでも活躍するタレントが揃ったもののサテライト所属選手を主体にしたすみだを相手に、昨日の勝利と、数時間前にレベルの高い2試合を観戦していいイメージで試合に入るかと思いきや、ゲームに集中しきれていないまずい出足を突かれ、開始1分でゴレイロへのバックパスで得た間接フリーキックを素早く動かされてすみだに先制点を奪われると、間髪を入れずに狩猟犬のような前プレを喰らって再び失点。
早々に2点のビハインドを負う。

パワープレーや追いかける展開に弱さを見せる半面、相手のスキや緩みを点に繋げるラッシュに強さを見せる十八番ですみだに一気に主導権を握られるも、前半半ばに昨日は個人でのドリブル突破以外の攻め手を見せなかったトルクメニスタンがパラレラから裏に抜け出して好機を作り、フォローに来た3人目がプッシュ。
ようやく出たチームプレーでトルクメニスタンが2-1に追い上げた。

その後はすみだの小気味いいプレスとカウンター、ピヴォを置いた攻めにトルクメニスタンが粘っこく守ってカウンターという構図で時間は進み、トルクメニスタンがしぶとく守って前半は1-2で終了した。

ハーフタイムに入ると夜も更けた体育館に両チームの監督の声が聞こえる。

トルクメニスタンも決して弱くはないが、3人以上の人数をかけての連動したオフェンスは少なく、カウンターをケアして迫力のあるドリブルで突っかける1人目の対応を軽率に臨まなければ怖いチームではない。
トルクメニスタンの奮闘ももちろんあったが、素人目には驚異度の低い相手チームに個人でどうアピールするかというところにすみだの選手たちがフォーカスしてしまい、スコアが2-1から停滞してしまった感があった。

フットサルはチームスポーツだ。
 
それでもゴールやアシスト、出場時間というものは数字に残り、個人としての評価はプレー時間や出場頻度に応じて定量化され、選手は自分がよい選手であることを個人結果で証明しようとする。
監督としてはどの試合もチームの勝利が第一になるだろうが、出場機会を求める選手にとって相手の力量が劣ると確信してからの試合はとかくエゴとの戦いになりがちで、それがサテライトチームのトレーニングマッチであればなおさらだ。

力量の落ちる目先の相手に個人としてアピールすることではなく、今後自分たちよりも強いチームと対戦した時を考え、どうチームに貢献するか。
そういうことの繰り返しが個人として、チームとして成長するために必要であり、良い選手と判断をされる基礎であり、どの監督も選手に求めていることだ。

細部は異なるが、ユーモアとペーソスが利いた比喩や諭すような言い廻しを随所に挟む須賀監督の秀逸な指示が体育館に響き、フットサルとも人生訓とも取れる言葉を真剣に聞くすみだの若者たちの表情が非常に印象的だった。

後半はそんな激が利いたのか開始早々から右からのキックイン→中央→左ファーへ早いパスを続けてのプッシュ、左→右→左と3人でのパス交換で一気に運んでのシュート、前プレでボールを奪い、ケアに来たゴレイロの頭上を抜くループと複数人が絡んだ一気の攻めでトルクメニスタンを5-1と突き放す。
トルクメニスタンも3v2のカウンターで1点を返すものの、前プレとキビキビとしたトランジション攻撃に終始受けに回り5-2という点差で試合は終わった。

昨日対戦した堅守のリガーレ東京に続き、今日は攻守に先手を取って相手を制するすみだとの対戦だったが、キャラクターの異なるハイレベルなチームとの対戦はよい経験になっただろうし、徐々に日本のフットサルというものを掴んできたのではないだろうか。

3日後の11/26(土)は関東1部のファイルフォックス府中との対戦だ。
 
プレス&カウンターもあり、フロアに人を広く配置してから縦パスを機に一気にラッシュする定位置攻撃も強力。
セットプレーやパワープレーにも見る物が多く、引き出し豊富なフットサルらしいフットサルをするチームを相手にどんな試合になるのかが非常に楽しみになった。

※続きます 2016/11/26(土) 国際親善試合 MFP味の素スタジアム 『ウサギとカメ』

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1,700人が来場したアリーナで試合を見つめるトルクメニスタンスタッフ。

クロモトのプレーエリアの広さと神がかったストップ。
仁部屋のドリブルとディドゥダのシュート力や早くて強いパスの精度。
ヴィニシウス、森岡の抜け目のなさ。
アルトゥールの試合を制する万能感・・・。

試合内容と会場の雰囲気。
彼らの率直な感想はどうだったのだろうか。
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日本の古刹、府中総合体育館に黎明期~発展期を支えた指導者たちが終結。
教え子たちが2020年、2024年のAFCでワールドカップの出場権を巡って再会という流れも大いにありそう。
4 1月

2016/11/22(火) 国際親善試合 MFP味の素スタジアム 『トルクメニスタンという国をご存知だろうか』

2016/11/22(火) 国際親善試合 MFP味の素スタジアム
リガーレ東京 1-2 トルクメニスタン代表

トルクメニスタンという国をご存知だろうか。


中央アジア南西部に位置する共和制国家。
カラクム砂漠が国土の85%を占めており、国民のほとんどは南部の山沿いの都市に住んでいて、豊富な石油や天然ガスを埋蔵する。
西側でカスピ海に面し、アフガニスタン、イラン、ウズベキスタン、カザフスタンと国境を接する。
首都はアシガバートで、永世中立国である。20世紀の末から21世紀にかけてソ連からの独立を果たした。

とある。

日本にトルクメニスタンを知る情報はほとんどなく、60分ほどネットサーフィンをすればURLは一周する。

得た情報を整理すると、議会や政党はあるものの大統領制による独裁政治で出入国は厳しく管理されており、ガソリンや住居は国が国民に安価に提供し、都市部は整備された道路と団地のようなビル群が並ぶ。
半ば鎖国状態にありながら資源の輸出で得た外貨を背景に国民生活はそれなりの水準で、国としてもよく統制が取れている穏健な独裁国家といった少々不思議な国、それがトルクメニスタンだ。

そんな国にフットサル黎明期を駆け抜けたふたりの日本人指導者が滞在し、同国のフットサル代表チームの強化に携わっている。
ひとりはFリーグ府中のGM/監督を務めた中村恭平氏、もうひとりはペスカドーラ町田の前身であるカスカヴェウ、Fリーグの湘南等を率いた前川義信氏だ。

JFAの活動のひとつに『国際交流・アジア貢献活動』というものがある。

経済およびサッカー先進国としてアジアのサッカー後進国への支援(当然だがAFCでの議会選挙の際に各国が持つ票を日本が取りたいという政治的な目的もある)として物品提供を行っていた同活動だが、2011年から指導者の派遣も開始するリリースをAFCに提出する。
それまで物品提供にはリアクションを示さなかったトルクメニスタンだったが、このアナウンスには興味を示し指導者の派遣を要請。

ただしそれは『サッカー』ではなく『フットサル』としてだった。

協会が驚きとともに適任者を探した際に白羽の矢が立ったのが中村氏であり、2011年から2012年までコーチとして同国を指導。
(ただし国状から入国ビザが許可されないためUAE、タイ、ベラルーシなど第3国でのトレーニングキャンプや親善試合、2012年W杯予選に帯同。
当時のJFAのレポートでは本大会で16強に進出したタイ、2016年W杯予選で日本に引導を渡したキルギスを相手に健闘したとある。
氏の熱を感じられる非常に濃い内容なのでゼヒ読んでほしい)

その後、2017年9月にアジアインドアゲームズの開催が決定したトルクメニスタンがフットサルの強化の一環として再び中村氏に監督就任を打診。
トルクメニスタン代表監督就任に合わせて同氏が前川氏をコーチに推挙し、特例的な入国ビザが発行されトルクメニスタンフットサル代表に2人の日本指導者が携わることになった。

そしてそのトルクメニスタン代表が強化合宿とトレーニングマッチを行うため、2016年11月17日~11月30日までの14日間日本にやってきた。

前述の通りミステリアスな国情の彼らがスポーツを媒介として海外に渡るというのは非常に稀で(少々事例は異なるが1995年に世界的に孤立していた北朝鮮でアントニオ猪木がプロレスを開催した無茶苦茶さを思い出してしまった)親善試合は、

11/22(火):リガーレ東京(関東1部/2015・2016年同リーグ優勝)
11/23(水):フウガドールすみだ(Fリーグ/2015年同リーグ3位)
11/26(土):ファイルフォックス府中(関東1部/2016年同リーグ準優勝)
11/29(火):バルドラール浦安(Fリーグ/2015年同リーグ8位)
11/30(水):ペスカドーラ町田(Fリーグ/2015年同リーグ2位)

といった関東の強豪が堂々と待ち構えるスケジュールになっていて、トルクメニスタン代表来日について情報提供いただいたスティーブ・ハリスさん(府中アスレティックFCのFacebookでコラムを連載)と幸運にも初戦のリガーレ東京戦を一緒に観戦させていただいた。

トレーニングマッチの舞台はFC東京のホーム、味の素スタジアムの横の民間施設であるMFP味の素スタジアム。
22:00からの施設の利用開始時間に合わせ、21:30頃からナショナルカラーの緑を基調にしたジャージを着たトルクメニスタンの選手たちが登場し、施設の外でランニング&ダッシュのウォーミングアップを開始する。

日本人コーチに率いられて日本でのトレーニングマッチに挑むトルクメニスタン代表。

まったく知らない言葉を話す彼らが薄暗いアスファルトの上でテンションの高い円陣を組み、屋内の逆光を受けて施設に入る後ろ姿がミステリアスさも相まって少し神々しく見えた。

試合は前半8分前後に右サイドからのキックインを小山選手がチョンドンで決めてリガーレが先制。
その後はハーフに引いて2ラインを形成して守るトルクメニスタンがしぶとく凌ぎ、フットサルに長けたリガーレがボールを保持して押し込む展開になる。

後半は徐々にトルクメニスタンが試合に慣れ出し、胸板や臀部の分厚さが光るフィジカルと負けん気の強さで球際に激しく当たる。
トルクメニスタンの攻め手はピヴォ当てもパラレラもなく、カウンターを含めドリブル突破→シュートの一辺倒だったが、迫力のある鋭い切り返しを駆使したドリブルと堅守を誇るリガーレディフェンスとの1対1は非常に見応えがあった。

試合全体を通し大方はリガーレペースだったが、後半10分過ぎにキックインからのチョンドンでトルクメニスタンが同点に追いつくと、コーナーキックから中央で待ち受けた選手が豪快に蹴り込む連続ゴールで1-2と逆転。

フットサルとしての引き出しの多さでは圧倒的にリガーレに軍配が上がるだけのチームクオリティの差があったが、フィジカルと気持ちで球際を制し、ドリブルで好機を演出、セットプレーから丸太のような足で繰り出す強烈なシュートで得点を挙げるという、非常に小さいパズルのピースを組み合わせてトルクメニスタンが嬉しい日本初勝利をあげた。

もう亡くなってしまったが私の祖父は終戦時に満州で捕虜となり、数年間ロシアに抑留されシベリア鉄道の工夫をしていた。
戦傷なのか凍傷なのか経緯は聞けなかったが手の指が数本なく、小柄だが筋骨隆々で、愛想のいい好々爺といった風貌で大好きだった。

普通に暮らしていれば接点のないミステリアスな国であるロシアの印象を聞くと『暗いイメージのある国だが、総じて陽気で、礼儀正しく、素直で純粋だ』とのことで、捕虜になっていた際に祖父が身につけていた腕時計を羨ましそうに見ていた彼らに、彼らの食事と腕時計の交換を持ちかけたところ嬉々として交換に応じたというエピソードを顔をくしゃくしゃにして語ってくれたのを今でも覚えている。

日本に住んでいると本当かどうか実感できない話だったが、2012年のワールドカップで巨体を揺らして自国を陽気に応援する祖父と同年代のサポーターのおじさまを見て、なぜかロシアを身近に感じた。

それ以来、旧ロシア領を含めロシアはいつか行ってみたい国としてどこか心に引っかかっている。

リガーレ東京との試合前のわずかな時間に中村氏と話しをできる時間があり、祖父のロシアのエピソードを話すと同様の事を氏も祖父から聞いたことがあるとひとしきり盛り上がった。
また、当時は100名弱ほどの日本人捕虜がトルクメニスタンに工夫として派遣されていたらしく、彼らは首都アシガバートから続く幹線道路のトンネルの掘削に尽力したとのことで、現地の方は日本人に対する感謝や尊敬の念があるということをトルクメニスタンで聞かされたという。
想像すらしていなかった日本人も知らない日本人の異国での活躍になんだか胸が熱くなってしまった。

トレーニングマッチ終了後、施設の使用時間の24:00までのミニゲームが終わる。
ホテルへの移動手段が必要とのことでハリスさんの車にもトルクメニスタンの選手を3名乗せて彼らのホテルへ向かった。
資源国国家であるところの一国の代表チームが14日間過ごすということでさぞ立派なホテルではと想像していたが、目的地に着くと長期出張のサラリーマンが常宿に使うようななんてことのないウィークリーマンションで、三々五々入口前に少々興奮気味の選手たちが揃う。

黒髪を短く刈り、深い瞳の緑のジャージを着た朴訥とした青年たちがひとりづつ中村氏と健闘を称える握手をし、深夜である時間帯を気にしてか話し声も小声に行儀よくマンションに入っていく。

『フットサル』というマイナースポーツで彼らは繋がっている。

監督と選手という言葉で彼らの関係を表すことは勿論できるが、母国を離れて異国に渡り、自分たちの成長を促すために時間を使い、経験を伝えてくれる異邦人にどれだけの敬意を払っているかは彼らの振る舞いを見ればよくわかる。

『国際貢献』という言葉は定量的にお金や物品を提供することと考えられがちだが、ウィークリーマンションの前の光景には何億円よりも重い説得力があった。

深夜1時。
予定がつく11/23(水)のすみだ戦と、11/26(土)のファイル戦を見に行くことに決めた。

彼らを無性に応援したくなった。

※続きます 2016/11/23(水) 国際親善試合 郷土の森府中市立総合体育館 『外国人の視点』

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施設の外でアップをするトルクメニスタン代表
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アップ中の選手たちと見つめる中村恭平トルクメニスタン代表監督。
非常にお茶目な好々爺といったトルクメニスタンのドクターがアジアの強国、日本のフットサル選手をパシャリ。
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書かれているスペイン語がかすれたレガース。
彼らの練習の跡が伺える。
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戦術面は前川義信コーチがボードを駆使して指示。
試合前のモチベーションを中村監督が鼓舞する。
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ドリブル突破でトルクメニスタンの攻撃を牽引した10番と、得点能力の高い7番。
次に見るのはアジアインドアゲームでのトルクメニスタンの躍進のニュースと共にか。

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 トレーニングマッチ終了後は全員で握手と記念撮影。
マイナースポーツであるフットサルが果たせる国際交流を考えさせられた少し不思議な光景。 
17 12月

2016/12/17(土) Fリーグ第25節 浦安市総合体育館 『理解される選手』

2016/12/17(土) Fリーグ第25節 浦安市総合体育館
バルドラール浦安 5 - 6 シュライカー大阪

ワールドカップに3度出場し、フットサル黎明期のメインキャストの一人である浦安の小宮山選手が今シーズン限りでの引退を発表した。

シーズン中に37歳を迎えるベテランの決断にあたり、フットサル界のゆかりのある面々からメッセージが寄せられ、その中でも2012年に史上初のワールドカップ16強に進出した際に共にキャプテンを務めた現大阪監督の木暮監督のコメントが奮っていた。

気持ちを前面に出す小宮山選手のメンタルや、攻守の切り替え・戦術遂行などのコンピテンシーを称えたうえで、小宮山選手得意としているもの、苦手なものの両面で上を行っている自分が育てたタレントたちで引導を渡す、という戦友への愛に溢れた介錯宣言になんとも胸が熱くなった。

23戦して132得点(1試合平均で5.7得点)というクレイジーな攻撃力で今シーズン16連勝を記録した大阪だが、ここ数試合は10月中旬のワールドカップ中断以降の2ヵ月間で11試合のスケジュールをアルトゥール/ヴィニシウス/チアゴのブラジルトリオと加藤/田村の木暮チルドレン、ベテランの小曽戸の6人で回してきた疲労が濃く、11/13の天王山、アウェーでの名古屋との首位直接対決を2-4で制してからは徐々にピークアウトしてきた感がある。
ここ最近は相手に先行される試合展開が目につき、前節の府中戦は2点を先行されるも辛くも引き分けという試合運びで前述の連勝が16でストップという形になった。

この日の浦安は彼我戦力差を考えてハーフに引いてのカウンターと、正確なスローを持つゴレイロの藤原選手が右角にロングボールを放ってのトラップ&シュートという弱者の戦術をチョイス。

藁でも木の枝でもなくレンガで築いた浦安のディフェンスに疲労度を考慮してアップでも息上げ系のメニューを廃した大阪の狼たちが襲いかかるも、大阪のオフェンスを耐えての右角へのゴレイロスローからチェスのトラップ&シュートで開始1分で浦安が先制。
 
10分にはゴール正面で得たフリーキックのこぼれ球をケニーが蹴り込んで2-0。
12分。再び右角へのゴレイロスローを受けた野村選手がライン際からシュートを放つと、大阪の唯一のウィークポイントであるゴレイロの柿原選手がゴール中央へ弾くチョンボ。
これに介錯試合の主役である小宮山選手が飛び込んで3-0とすると場内は一気に盛り上がった。

3-0のビハインドで迎えた後半は今シーズン抜群の冴えを見せる勝負師木暮監督が前半16分ピッチに立ったアルトゥール/チアゴ/小曽戸/加藤のFリーグ最高の1stセットと、わずか4分の出場になった今井/田村/佐藤/村上の2ndセットをシャッフル。
1stセットの途中でこの日がデビュー戦となる小柄なドリブラー系のアラである18歳の仁井選手をベテランの小曽戸選手と交代させ、2ndセットの旗振りに小曽戸選手をスライド。

少々大人しかった2ndセットのディフェンスラインを高めに設定してのプレスで浦安のスタミナを奪い、23分にアルトゥール選手がミドルシュートを決めて反撃の狼煙を上げると一気に暴力的な攻撃力が爆発。
 
28分に加藤選手が粘ってチアゴ選手に繋いで最期は小曽戸選手がプッシュ、29分に再びアルトゥール選手が中央からズドンと決めて同点。
32分にチアゴ選手がゴリゴリとした突破でゴールに蹴り込んで3-4と逆転すると、続けて小曽戸選手のシュートパスを加藤選手が胸で詰めて3-5。
最期はコーナーキックからのチアゴ選手のシュートに小宮山選手がスライディングで飛び込むも及ばず一気に3-6と突き放す。
浦安も粘りを見せ4分間のパワープレーで終了19秒前までに5-6と追い上げるも最期は大阪が1点差でシャットアウトとなった。

攻守に別格のパワーを見せるアルトゥール。
引き出しは少ないが反転、馬力、シュートに特化した純ピヴォのチアゴ。
サイドからの突破とプレー選択にセンスを見せる加藤。
チームプレーに実直で総合力が高い小曽戸。

名古屋、すみだ、町田など下部組織からの登用を含め、全メンバーに試合時間の経験値を振り分けて綺麗な六角形の雪結晶を目指すチーム作りと比べ、大阪は少数精鋭で錬成した鋭利な氷柱でスキを見せた相手を貫く。
 
勝負である以上結果がすべてで、わかっていても止められないお決まりのメンツが試合を決める大阪は非常に強力で、クオリティが高いブラジルトリオを軸に据えた今シーズンはそれが最適解だろう。
ほぼ手中にある優勝と合わせて、過去最も効いている助っ人外国人のアルトゥールにはMVP、得点王も総取りしてほしいところだ。

試合後、今日の主役である小宮山選手と木暮監督が小曽戸選手を挟んで談笑する場面があった。
 
日本のフットサル界を同世代として現在進行形で歩んでいるふたりを見て、ふとフットサル選手や監督としての成功とはなんだろうということを考えてしまった。

世界を見渡してもプロチームだけで運営されているリーグはなく、日本でプロチームは名古屋だけでその最高年俸は酒井ラファエルの1,500万円と言われている。
多くの選手はチームが経営するスクールや、スポンサー企業、あるいは一般的な仕事をこなしつつ、練習をこなし試合に臨む。
隣の芝生のサッカーと比べてもJ3並みの待遇だろうし、選手やチーム、リーグを含めて正直よく続けられるなとも思う。

ただ、すべてのスポーツがスポットライトを浴びることはないだろうし、トップレベルで活躍することで生計を立てられるだけの金銭的なパイがあるかということがスポーツの価値を左右するわけではない。
『マイナースポーツ』という言葉にはどこか侘しさを感じるが、地上波で放送され、雑誌が売れ、毎回会場が満員になり、競技と周辺環境を含めてお金が分配され、黒字を計上するメジャースポーツはごくごく一握りだ。

定量的な尺度として金銭面に目が向くことを否定する気はまったくないが、今回、小宮山選手が引退するにあたってフットサル界の縁者やファンから沢山の声が集まっているのを目にして感じたのは『競技を通して自分を知ってもらう』ということがひとつのゴールであり、成功なのではないだろうかということだ。

素早い攻守の切り替え、スライディングでのシュートブロックやファー詰め、意外と上手いウンドイス(ワンツー)でのパス出し、チーラして吼える・・・。

この人はこれ、という個性を知ってもらうことは競技者としての誉れだろう。
そのひとりひとりの積み重ねがチームのカラーになり、ひいてはリーグの特性に繋がり、競技の魅力になるのだと思う。

今シーズン、Fリーグの観客動員数の落ち込みが顕著で500人を切る公式記録を度々目にするようになってきたが、危機感をもつべきはゲートフィーでも集客施策の成否でもなく、Fリーグに感心を持つ層が少なくなってきているということだ。

最も高貴な娯楽は、理解する喜びである

とは音楽、建築、数学、幾何学、解剖学、生理学、動植物学、天文学、気象学、地質学、地理学、物理学、光学、力学、土木工学と各分野で群を抜いた才能を発揮したレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉だが、理解する喜びがファン視点としてあり、理解される喜びが演者視点としてあるという16世紀からの至言だ。

Fリーグ準優勝、15得点を挙げベストファイブを受賞し、全日本選手権を制した2008シーズンがキャリアのハイライトだが、その後は記録に残る活躍はそうない。
それでも引退を惜しまれる記憶に残るプレーが数多くある小宮山選手はリーグ屈指の『理解された』選手だろう。
それこそが彼の成功であり、10数年間トップランナーであり続けた誉れであることは疑う余地がない。

観客動員の減少や、人気、トップリーグとしての求心力の低下が顕著なFリーグだが、ギラギラした個性や暴れるような熱やこだわりを持つ、魅力的で理解しようと思える選手が数多く登場し、理解される選手として活躍することを願ってやまない。
 
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イクスピアリでランチのついでにオマエを殺りに来たぜ、とばかりにラフな出で立ちで介錯試合に臨む木暮監督と、食いつかせて裏のスペースというシンプルな秘策で待ち構える米川監督。
両チームとも前後半で明暗がくっきり出た試合で、介錯はプレーオフか全日本選手権に持ち越しか。
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特別指定選手として出場時間を延ばす石田選手。
フィジカルと強烈なシュートを活かして早く初ゴールを挙げたい。
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コンスタントに活躍を続けるチェスとケニー。
ピッチやベンチの振る舞いを見る限り性格も良さそう。
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少数精鋭での戦いが続く大阪。
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過去のFリーグを見ても最も勝利に貢献している助っ人外国人。
181cm/80kgというカタログスペック以上のフィジカルを見せる大阪の巨人、アルトゥール。
分厚い体でボールをキープし、強烈ながぶりで相手のバランスを崩してボールを奪取。
日本人を相手に半径2メートルの距離では何もさせない超々弩級の進撃を見せる。
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強烈な縦のラインを形成するチアゴ(右)。
シンプル故にやっかいなゴールゲッターは23試合で32ゴールとハイペースで得点を量産。
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今シーズン一気に若返ったプレーを見せる小曽戸選手。
万能型アラは2024年のワールドカップまで狙える雰囲気。
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木暮監督の最高傑作、得意のドリブルで作ったズレを活かしてゴール、アシストを生むサイドの振付師、加藤選手。
いまいちだった前半はこの表情も後半はアシストとゴールで勝利に貢献。
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前半2分、後半4分程度の出場ながら3回の出場機会で徐々に持ち味を出した若干18歳の仁井選手。
アルトゥールの1/4ほどのサイズながらボールをさらして相手の反応を見るおませなムーブでリズムを作った。
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この試合後に引退を表明した村上選手。
強烈なシュートとハードなマークで名勝負を演じたベテランは2012年ワールドカップで16強入りに貢献。
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大阪唯一のウィークポイントであるゴレイロの柿原選手。
1、3点目ははっきりゴレイロの責ありで、ボトムからの組み立てでサイドに開いても使わない、詰まり気味でもバックパスを出さない場面が多く、チームの信頼度が伺える。
彼が足元でボールを捌く機会が増えたら大阪にスキはなくなりそう。
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Fリーグ最高セットの一角、1-3で押すアルトゥール/チアゴ/小曽戸/加藤の1stセットと、0-4のクアトロで構成する今井/田村/佐藤/村上の2ndセット。
2失点後のタイムアウトで木暮監督が必死に修正のコマを動かす。
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今シーズンの浦安の主役、小宮山選手が3点目をゲット。
絶対的な首位のチームを相手にした大量リードに会場はやんやの歓声。
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試合中に不敵な笑みを浮かべるチアゴを浦安の屋台骨、荒巻選手と小宮山選手が必死に抑える。
万能型全盛の近代フットサルで第一選択肢がシュートという絶滅危惧種な純ピヴォは意外にも厄介。
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度々見かけるハーフタイムでの謎アイドルのパフォーマンス。
今回はpretty☆monsterが歌とダンスを披露。
彼女たち文句をつけても仕方ないのでお好きな方はフォローしてあげてください。
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劣勢の大阪は普段はポケットに手を入れてクールに決める木暮監督が審判に大抗議でチームを鼓舞。
第3審判の新妻氏になだめられてまぁしょうがないかなヒトコマ。

今シーズンは女性の第3審判、タイムキーパーの登用が目立ち、第3審判は新妻氏、タイムキーパーは齋藤氏と女性が担当。
2012年のワールドカップではブラジル人のレナート・レイテ氏が女性ながら副審を担当したこともあり、1、2シーズン後はFリーグで笛を吹く女性審判の登場に期待大。
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0-3から3-6、5-6という劇的な逆転勝利も試合後の浦安サポーター席への挨拶の場面で一悶着。
調子が落ちてきたチームは怒りや憤りといった感情でパフォーマンスを支える場面も増えてきそう。
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試合後は小曽戸選手を交えて介錯試合のメインキャストが談笑して握手。
木暮監督のイジリに小宮山選手がムッとしたところを小曽戸選手がなだめたのかなぁ、と夢想するのも楽しい戦友の邂逅にホノボノするワンシーン。
 
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