2012/11/16 フットサルワールドカップ2012 準決勝 フアマークインドアスタジアム
ブラジル 3 - 1 コロンビア 

アルゼンチンにリードを許す苦しい展開になった準々決勝。
王国ブラジルの窮地を救ったのは予選ラウンドの日本戦での負傷から復活した、フットサル界のアイドル、ファルカン。
タイに入ってから7日間。初めて目にするワールドカップでのブラジルの試合と、ストーリーのあるヒーローの復活に期待は大きく高まった。

今まではフットサルを見てそこまで感情的になることはなかったけれど、旅の恥はなんとやらもあり、仕掛けで抜け出せば吠え、そっちに出すかという好プレイに合わせて叫び、ゴールが決まれば絶叫と、ワールドカップというお祭りをそれなりのお祭り気分で楽しませてもらっている。
準決勝まで進出したとはいえ、格下のコロンビアが相手ならきっとそんなシーンが沢山見れるんだろうと思いながら準決勝の2試合目を待った。 

準決勝ということもあり、少々日本人が増えたスタンド。
それでもいつもどおり現地の人、欧州、南米の方々とごった煮の席の間に腰を掛けると、隣に座っていたタイのオジサンが英語と現地語で熱っぽく話しかけてきた。

『俺は前戦のコロンビア対ウクライナを観た。コロンビアの10番(アンジェロット)、9番(レジェス)、8番(アブリル)のテクニックは最高だ。俺は今日、コロンビアが勝つと思ってる。アップをよく見ときな』
『一昨日、ファルカンがそばの席に座ってたんで、今着ている大会のTシャツにサインもらったぜ』
『タイ人の観客は静かすぎてつまらねえよ。ブラジル、コロンビアの観客のバカ騒ぎを見ろよ。一昨日は俺もヤツらと一緒に大合唱してやったぜ』

自分が大切にしている存在の価値を、他人のフィルターを通して知りたい、語りたい。
マニアが1番欲しいものは、自分がどれくらいマニアかを判断できる自分以外のマニアかもしれない。
そういう思いは多分万国共通でひとりでフットサルを見に来た自分にこの人がマニアの匂いを感じてくれたのならそれはそれで嬉しいし、タイでのとても粋な出会いに感謝だ。

試合は開始1分でブラジルが先制しオッサンが肩をすくめて苦笑を浮かべるも、その後はゴレイロがスーパーセーブを連発し、追加点を許さない。
ブラジル、スペイン、ロシアなど強豪国は開始5分の圧力が毎度半端じゃない。
ここで一気に2、3点を挙げ、相手の戦意を挫くのが彼らのセオリーだけど、この時間をしのげば徐々に目と体が慣れてくる。

ゴレイロを中心にしのぐコロンビア。
時間が進むにしたがって10、9、8番がファルカンフェイント、エラシコを使ってのドリブル&カットイン、軸足裏からしゃくって浮き玉でのピボ当てなど魔法のようなプレイを発揮し出す。

10、9、8番のテクニックは最高だというオッサンの言葉は嘘じゃなかった。
会場の雰囲気もコイツらやるじゃん、となったところでカウンターからゴレイロとの1対1をズバッと決めてコロンビアが同点に追いつくとスタンドが揺れて、自分は叫び、オッサンはドヤ顔でなにかを吠えた。

会場の歓声に負けないようにこれがワールドカップだよね、って大声で言ったら『だろー』って感じでオッサンが頷く。
名前もわからないし、言っていることもひょっとしたら自分の感じ方と違うかもしれない。
それでもこの人とこの試合を一緒に観れたことがとても嬉しい。

1-1のまま前半が終了し、ブラジルは後半開始からフットサル界のトップアイドル、ファルカンが登場。

ファルカンを含め77年生まれがチームの主力を担うブラジルは今回でこのグループの世代交代は免れない。
前述の10、9、8番を含め大半が88年生まれで構成するコロンビアは次回大会がピークだろう。
コロンビアの3人がこれから選手としてどんなキャリアを積むかはわからない。
ただ、大成するなら間違いなくこの大会がブレイクポイントになるはずで、フットサル黎明期を駆け抜けたトップアイドルが身をもって示す次の世代への薫陶に胸が躍った。

ファルカンがヒールリフト、ファルカンフェイントからのカットインを出せば、コロンビアも本家の前でファルカンフェイントをやり返す。
ずっと見ていたいアイドル同士の意地の張り合いは、脇を固める助演陣が相手のミスをキッチリ得点に繋げてブラジルが3-1のリードで終盤へ。

フットサルの定石に反し、ビハインドの終盤でもパワープレーを行わず4対4での勝負を挑むコロンビア。
ブラジル相手に自分達のスタイルにこだわるテクニシャン達が妙技を振るい、お株を奪われた感のあるブラジルも百戦錬磨のベテラン達が必死で体を張る。

スタジアムに満ちるワクワク感。

きっとコロンビアの選手もファルカンが大好きで真似して育ってきたんだろう。
アイドルに憧れ、アイドルの真似をして、次のアイドルが育つ。
そんな積み重ねが歴史になり、ジャンルに深みを与えていく。
タマゴ達が次代を予感させる煌めきを放つものの、元祖アイドルの壁は崩せず、そのまま3-1で試合終了。

ブラジル相手に堂々とした戦いを挑んだコロンビア。
観客はいいものを見れたって満足感で瞳がキラキラしてて、コロンビアの選手もやりきった清々しい顔をしているし、ブラジルの選手もなんだか嬉しそうだ。

大きな歓声と拍手がアリーナを包む素晴らしいカーテンコールに合わせて、これがワールドカップだよねってオッサンにもう一度声をかける。
やっぱり『だろー』って感じだった。

今日の試合に言葉はいらない。
満面の笑みを浮かべるタイと日本のマニアの感想は『大満足』で一致した。

決勝はスペイン対ブラジルで3位決定戦はイタリア対コロンビア。
消化試合に終わりがちの3位決定戦も俄然楽しみになってきた。

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スペイン、イタリアのサポーター席に座るブラジルのサポーター。
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そこに試合を終えたイタリアとスペインの選手がサポーターへ感謝の挨拶に訪れる。
周りの観客がどっと集まり、カメラを構える。
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6~7割程度の客入りとなった会場。
準々決勝あたりから観客が目に見えて増えました。
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ブラジルとコロンビアの国家斉唱。
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試合後の両国。
敗れたコロンビアにも喝采が送られ、選手達もいい笑顔で手を振りました。