2016/9/3(土) Fリーグ第13節 小田原アリーナ
エスポラーダ北海道 4 - 6 シュライカー大阪
アグレミーナ浜松 1 - 3 府中アスレティックFC
名古屋オーシャンズ 5 - 5 フウガドールすみだ

13節で迎えた1位すみだと2位名古屋の首位決戦。

前半3分にゴレイロの大黒選手のパスミスを拾って名古屋が先制も、すぐさますみだがFリーグとタイで行われた日本代表戦を含めて8月に7試合を戦った勤労青年の清水選手が取り返して同点。

すみだがお得意の2分毎の小刻みなセット交代でスタミナの消耗を抑え、フレッシュさをアドバンテージにできるよう挑めば、名古屋もそれに応じて新たなセットをフロアに送る。
 
3戦総当たりのリーグ戦の初対戦で負けないことを前提とした神経質な戦いよりも、相手のリアクションを通して自分の実力を試し合うように両チームがボールホルダーにアタックしゴールに迫る。
ミス待ちではない積極的な攻守が緊張感と喝采を誘い、濃厚な余韻を残して1-1のまま前半は終わった。

前半は名古屋のペドロコスタ監督がすみだのセットチェンジに合わせてセットを変えるじゃんけんで言うなら後出しの作戦だったが、後半はすみだの須賀監督がこれを崩そうとギャンブル。
諸江/清水/西谷/岡山からスタートし22分に稲葉/太見/田村/渡井に交代、ここで名古屋が呼応してセットを変えると見るや後半4分からは1分、1トランジションごとに4名を一気に交代する。

24分に諸江/清水/西谷/岡山のセットでカウンターからダイナミックに駆け上がった岡山選手が決めて1-2とした後、すぐさまセットを変えて1分後に太見/田村/渡井/ボラのセットで再びカウンター。
後手に回って相手が混乱し、ディフェンスが崩れたところをボラがプッシュして1-3。
 
すみだのギアチェンジに置いて行かれた名古屋がたまらずタイムアウトを取るも、34分まで、

諸江/清水/西谷/岡山
稲葉/太見/田村/ボラ
諸江/清水/西谷/岡山
太見/田村/渡井/ボラ
諸江/清水/西谷/岡山
稲葉/太見/田村/渡井
諸江/清水/西谷/岡山

と矢継ぎ早にセットを交代し、名古屋に的を絞らせない。
 
この間、相手セットプレーの間にメンバーチェンジをしないという鉄則を破ってメンバーチェンジをし、あっさりドフリーで決められたのはチームの約束事を愚直なまでに遂行するすみだのチームカラーが出たものだろうが、ライン際でビブスを交換する度に勢いが加速するさまはフットサルの新戦術を想起させるものだった。

すみだの7変化に目が慣れ出した残り6分から名古屋が安藤選手をゴレイロに据えてパワープレーを開始。

7月のAFC。
12,000人の観客が入るタイのバンコクフットサルアリーナで前年度優勝チームのイランのタシサット、決勝戦でのイラクのナフィットに食らいついたパワープレーの緊張感と、1/33試合のFリーグ首位決戦の緊張感を想像する。
 
絶対的エースの森岡選手が在籍していた去年までの名古屋の強さは、結局この人がオイシイ所を持っていくという圧倒的な個の力だったが、1勝3分1敗という戦績でドラマチックな優勝を達成したAFCからの流れを見ると今期はチームワークと勝負強さだろう。

ここのところパワープレーの逆転劇が少ないFリーグだが、AFCの名勝負を演出した名古屋のパワープレーのクオリティは2部練習できるチームならではの完成度で35分に八木選手が決めて同点に追いつく。
流れを引き戻そうとすみだがタイムアウトを取るも、その1分後の36分にセルジーニョ選手が決めて4-3と名古屋が逆転に成功し、小田原アリーナはどっと沸いた。

すぐさますみだも稲葉選手をゴレイロにしてのパワープレーを開始すると、38分51秒に今シーズン絶好調の西谷選手がゴール中央で細かいステップで相手をずらしてのスナイプショットを決めて4-4とするも、39分35秒でパワープレーで相手を動かしてできたギャップにセルジーニョ選手が決めて5-4と名古屋が再度の勝ち越し。
これで終わりかと思いきや、試合終了20秒前にパワープレーで左角に入った西谷選手にボールが入ると、中央への早いボールをケアしてニアを開けたゴレイロの関口選手のスキを見逃さず、これをダイレクトでニアに強シュートをブチ込んですみだが再度同点に持ち込んだ。

39分48秒で5-5になったスコアボードはもう動くことはなく、名古屋のパワープレー開始から5分間で5点が生まれた首位決戦は大喝采と異常な熱気を残して終わった。

・カウンターが不発で終わった後のミス待ちの攻守
・疲労が溜まる終盤で強度の落ちるトランジション
・結局点差が広がるだけのパワープレー

Fリーグも10年目を迎えた。
チーム数も増え、どこか慣れがあり、どこかこんなものかという思いもある。
チーム、リーグの運営を考えても昇格・降格は現実的ではないだろうし、レベル差が如何ともしがたいゲームもある。
リーグ自体が競技力の向上と普及という側面を持っている以上それはそれで仕方がないだろう。

10年間のFリーグでも3指に入る名勝負は両チームの積極的な攻守があり、両監督の哲学あり、終了寸前までお互いがゴールを狙う獰猛さがあった。

唯一のプロチームである絶対王者名古屋が9連覇するFリーグだが、基本的にはアマチュアチームであり、練習時間が限られているはずのすみだが後半34分に名古屋がパワープレーを開始する前まで試合をリードしている。
熱戦、名勝負という言葉で表現してしまえばそれまでだが、工夫や知恵、組織の意思統一があったからこそ名古屋と伍する時間を作れたのだ。

奇跡的な熱戦に反し1,103人という少々残念な観客数に終わったが、まだすみだホームの墨田区総合体育館と、名古屋ホームのオーシャンアリーナでの対戦が待っている。
 
観客が想像する首位攻防戦を越える試合だったからこそ試合後のスタンディングオベーションがあり、いい意味で観客の予想を裏切る試合を提供し続けることがトップリーグ本来の姿だろう。
このベストバウトを塗り替えるベストバウトに会える日をファンはきっと待っている。
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小田急線蛍田駅下車から徒歩15分ほどの小田原アリーナ。
道中の稲穂もそろそろ収穫の雰囲気か。
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8月にタイで行われたタイランド5で日本代表キャップを記録した北海道のフィクソ、19歳の小幡選手。
今日はミスが多く、ほろ苦いプレーが目立ったがまだまだキャリアはここから。
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圧倒的なフィジカルを活かして半径2メートル以内のボールはすべてマイボールにしてしまう制圧力を見せる大阪のフィクソ、アルトゥール。
大阪の巨人は今後の上位対決を席巻しそう。
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フィジカルがフィットし、大阪の攻めに深みを与えるピヴォのチアゴ。
収める、打つのシンプルなプレーだが相手に与える圧力は侮りがたい。 
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出場時間を延ばす個性的な木暮チルドレン達。
フィクソの田村選手は落ち着いて試合を締め、加藤選手は鋭いドリブルから惜しいシュートを連発。
弾幕の銘は『みずはほうえんのうつわにしたがう』と読み『注いだ器の形に水が変化するように、人は環境や友人によってどのようにも変わる』という意味。
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セットを固定せずブラジル人トリオ+木暮チルドレン+小曽戸で回す3位の大阪。
お前らやってこいよとばかりに送り出す木暮監督は貫録十分。
これまで浦安、町田、大分、大阪が名古屋に挑むマッチレースが多かったが、スリーワイドの優勝争いなるか。
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連敗を5で止めた府中。試合中の谷本監督の気合と試合後の選手の笑顔が苦闘を物語る。
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Fリーグとタイで行われた日本代表戦を含めて8月に7試合を戦った勤労青年の清水選手。
アジアを代表するピヴォと呼ばれる日もそう遠くなさそう。
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今期一番の補強となった渡井選手の完全復帰。
諸江選手、西谷選手とクオリティの高いフィクソ3枚がすみだの攻守を支える。
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譲る気持ちは全くなし。首位対決を迎える両監督の静かな闘志。
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齋藤選手が青に染め、赤(橋本選手)、黄(八木選手)と合わせてとうとう完成した名古屋のヤングシグナル。
タレント軍団の中でコンスタントに出場している彼らの経験の蓄積がシーズン後半のアドバンテージになるか。
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要所を締めた星選手、安藤選手の日本人フィクソ。
日本人選手の勝負強さは昨季までの名古屋になかった特徴のひとつ。
元々ドリブラーのセルジーニョは抑えられることが多かったAFCでなぜか守備が急成長。
パワープレーから得点を挙げた場面では、ワンステップで強烈なシュートを蹴り込んで見せた。 
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154cmと小柄ながら機を見てピヴォに入り攻撃を活性化させる中村選手。
今期は出場機会は減ったがフロアに立てば流れを変える働きを見せる。 
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重心移動、瞬発力、ボールキープに必要なお尻の大きさに比例する感のあるフットサル選手のクオリティ。
名古屋の攻守の要、尻は口ほどに物を言うシンビーニャと酒井ラファエル。
身長、体重はすでにあるが、いつかチームごとのヒップの平均値を集めたデータも見てみたい。
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試合中に激を飛ばす名古屋のペドロコスタ監督。
選手の手を掴んで攻守のポイントを熱弁する熱血監督の姿はこれまでの名古屋のベンチになかったもの。
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名古屋の先制点に繋がったバスミス、パワープレーから西谷選手にニアを抜かれた5失点目。
大黒選手、関口選手の両ゴレイロにとっては悔しさの残る熱戦か。
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長い距離のランニングを連発し、1-3のリードに貢献した岡山選手。
ボール奪取後、空きスペースを見つけるや40メートルを一気に駆けた。
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今日も前線でポイントを作ったすみだの太見選手。
2009年、2013年の全日本決勝にも出場した名勝負数え歌のメインアクター。
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すみだの攻守のスピード、テンションの高さに適応したボラ。
これまでのテクニックと嗅覚を利かせてのゴールに加え、カウンターからネットを揺らす機会も増えそう。
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ゲームの損益分岐点を見つめる西谷選手。
クイックネスで決めた4点目、ゴレイロがニアを空けたのを見逃さずにダイレクトで撃ち込んだ5点目はお見事の一言。
今、最もFリーグで怖いアラ。
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試合終了後に両監督が握手。
先にアクションを起こしてリードを奪うものの勝利のチャンスを逃した須賀監督と、練度の高いパワープレーで負けゲームを拾ったペドロコスタ監督。
ゲームに慣れだした後半5分前後からどちらが先に仕掛けるかが次戦の見所か。
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積極的な攻守があり、両監督の哲学あり、終了寸前までお互いがゴールを狙う。
今シーズンの両チームの対戦は2016/11/3の墨田区総合体育館と、2017/1/15のオーシャンアリーナ。
今日の試合が陳腐に感じる熱戦を期待しています。