2017/6/12・13(土・日) Fリーグ第1節 国立代々木競技場第一体育館
シュライカー大阪 4 - 3 エスポラーダ北海道
ペスカドーラ町田 4 - 1 デウソン神戸
バルドラール浦安 0 - 1 アグレミーナ浜松
フウガドールすみだ 9 - 1 バサジィ大分
名古屋オーシャンズ 1 - 0 府中アスレティックFC
湘南ベルマーレ 6 - 0 ヴォスクオーレ仙台

11年目のFリーグが開幕。
今回は個人的な2017-2018シーズンの注目点をいくつか紹介します。


①シュライカー大阪のAFCフットサルクラブ選手権の挑戦(2017/7/20~7/30)
AFCフットサルクラブ選手権は2011から7度開催されており、2011/2014/2017年に名古屋が同大会最多の3度優勝している。

昨季、就任3年目の木暮監督のもと、ブラジルトリオ+小曽戸/田村/加藤未渚実の6名を中心に群を抜いた結果で優勝したが、酷暑のベトナムで7/20~7/30の11日間、最大6試合の連戦はそうもいかないだろう。
同大会のレギュレーションでは参加チームの国外選手の起用はベンチ入り2名/出場1名(Fリーグではベンチ入り3名/出場2名)となっており、今季加入した相井選手、芝野選手、堀米選手らのアタッカーと既存の日本人勢力を活かしつつのパズルを余儀なくされそうだ。

昨年の名古屋はシンビーニャが負傷のため、唯一の外国人だったセルジーニョがバランサー的な役割で八木/橋本/齋藤らの若手3人集をバックアップ。
森岡/北原らの大黒柱が去った新生名古屋は1勝3分1敗(イランキラー関口選手の嫌がれせのようなストップ連発による2PKで勝ち抜け)という奇跡的な結果でカーテンコールを迎えたが、今回の大阪はAFC向けに日本人選手の駒を上乗せし、盤石の体制での参戦になる。

名古屋以外ももちろんだが日本人監督が同大会を率いるのも史上初で、日本フットサル界のアイコンのひとりである木暮監督にはミゲル・ロドリゴ監督の後任をスペイン人に限定した日本代表監督人事を後悔させる結果を期待したい。
グループリーグ同組であり、日本のライバルのイランから出場するパサンには昨年のワールドカップでブロンズシュー(MVP序3位)を獲得したキャノンシューターのイスマイルプールが所属している。
日本人監督としては他から一歩リードした感のある木暮監督にとっては、手腕を証明するには願ってもない最高の大会だろう。
若干面倒くさそうなニヒルな笑みを浮かべて優勝トロフィーを掲げてもらいたい。


②アジアインドアゲーム(2017/9/17~9/27)
2014年のAFC(各国代表)の2連覇以降、一気に強化予算やスケジュールの冷遇が目立つフットサル日本代表。

2015年は年数回の強化合宿とトレーニングマッチで強化を図ったもののあえなく本番で撃沈しワールドカップ出場権を逃し、先日バンコクで行われた第1回U20選手権は国内合宿と名古屋サテ&トップとの練習試合で臨みベスト8敗退。
続くU25という珍妙なカテゴリーで神戸フェスタに出場したがトルクメニスタンフル代表に3-3の引き分け、U25クロアチア代表(実際は25歳以上の選手も参加)に1-3で敗れてグループ最下位に沈み、参加6チーム中の5、6位を賭けた順位決定戦でオーストラリアのGalaxyFCを11-0で退け、明確な1弱の大会で見事5位を死守した。

同大会に日本フットサル黎明期の名指揮官である中村氏、前川氏に率いられて出場したトルクメニスタン代表は1、2位決定戦に進出し、デウソン神戸に次ぐ2位に輝いた。
このチームは昨年11月の日本遠征ではリガーレ東京、ファイルフォックス府中、すみだ、浦安、町田を相手に1勝4敗の戦績だったが、その後、今年同国で開催されるアジアインドアゲームズに向けて国内合宿、スペイン遠征と精力的に強化を重ね、世界最高リーグであるスペインリーグ1部チームに勝利するまでに成長している。

意欲を持ち、良い師に学び、強敵と鍛錬を積む。

先日開催された甲斐選手の引退試合で散見したエピソードだが、90年代後半から2000年代前半にかけて、チーム、個人でブラジルへ武者修行に行くことが日本のトップランナーの間でトレンドになっていて、愚直な正攻法とも言える先人たちの強化の種が日本代表の2000年代後半の躍進から2014年のAFC連覇に繋がっていたことは間違いない。

アジアインドアゲームズには(フル代表であるかの公式なアナウンスはまだないが)日本代表も参戦する。
トルクメニスタンをはじめ諸外国から優秀な指導者を招聘し勢力的に強化に励むアジア各国との対戦を通して、せっかくのスペイン人監督を迎えながら研鑽の機会がない元強豪国の現在地がハッキリとわかるはずだ。


③府中アスレティックのホームアリーナ問題(2017年シーズン通年)
もともとメインアリーナに据えた府中市総合体育館がFリーグの規定(ピッチサイズが縦40メートル×横20メートル必要だが、おそらく縦38メートル×横20メートルほど。観客席数が2,000人以上必要だが1,500人程度。また空調があること)に満たなかったものの、今後の是正を条件に2010年からFリーグに加入した府中。

空調は整備されたものの、(元々いつまでに必要かのリリースはなかったが)ピッチサイズと観客席数が是正期間を越えても未達であることを理由に8月以降の府中市総合体育館でのホーム開催がリーグとして許可されなかった(ここは多少の憶測を含む)。

開幕以降、名古屋9連覇時代の対抗馬の一角として名勝負を演じ、2015年には決勝戦で名古屋を破ってオーシャンカップ優勝に輝く。
席数は少ないながら着席率が高いアリーナからコの字に囲んでピッチを見つめる昭和感とローカル色たっぷりの府中市総合体育館は、オシャレでカッコいいという近年のアリーナスポーツと対局にあるもののギュッと詰まった熱を持ち、一緒に共通のコンテンツを楽しむという観るスポーツを体現している素晴らしいアリーナだと思う。

今年、今後のFリーグ参入へのトライアルを目的としたFチャレンジリーグから柏が脱退し、徳島ラパスはチーム自体が何のアナウンスもなく消滅した。
代わりにボアルース長野、浜田フットサルクラブが参入したものの、現有リソースに勝算ありと見込んだ2チームがなぜ脱退したのかの議論やフィードバックが行われたのかが非常に気になった。

ルールに準拠することはもちろん大切で、違反を起こせばペナルティが待っている。
それが契約や法に準拠した現代社会のベースであることは間違いないし、否定する気は一切ない。
だが公序良俗やモラルに反したわけでもなく、フットサル界の盛り上がりに貢献し、熱狂的に応援してくれている人たちの感情面を無視する裁定はちょっと空気が読めない気がしてならないのは私だけだろうか。

暫定条件での参入という経緯もあり、府中側も強く出れないというのは想像に難くない。
こういう事例は言った言わないや、声の大きい人の意見が通りがちで、当事者以外は沈黙が金だ。

もちろん府中がピッチサイズと観客席数を満たせるアリーナの算段を付けることが最もスッキリする解決策だが、現状がパワーゲームに終始しているようなら各関係者は以下のFリーグ設立時の理念に目を通してみてほしい。

11年前の憲章は有名無実化していないか、Fリーグが目指していた未来に向かっているかを確認するにはいい機会だろう。

『F』はフットサル(FUTSAL)の頭文字というだけではなく『Fight』『Fun』『Friend』『Fair Play』『Future』という意味も込められている。
Fリーグは理念として、日本のフットサルの競技レベルを向上することやフットサルを普及して競技人口を拡大すること、フットサルコミュニティを創出して国民の心身の健全な発達に寄与すること、国際交流を行って国際親善に貢献することを掲げている。


④販売/観戦の多チャネル、多メディア展開を軸としたIT活用(2017年シーズン通年)

2016年に開催されたオールスター、2017年の全日本選手権で実施されたAbemaTVによるライブ放送が今シーズンからFリーグ本戦についてもフォローされることになった。
『AbemaTVがあるから会場よりも家からAbemaTVで観ればいいや』という層が増え来場者数への影響があるのではと懸念されたが、開幕セントラルの最多入場者数は2日目14:30キックオフの名古屋府中戦で2,018人となった。

昨シーズンの開幕セントラルの最多入場者数は1日目17:00開始の町田神戸戦の2,934人で、3カ月前に行われた全日本選手権の決勝戦が3,228人だったことを考えると、確かに観客は減ったように思うが、アリーナ/スタンドともどこかの会場で観たことのある面々はやっぱりいて(すいません。自分もですが...)、なんだかんだで骨の髄までジャンキーなコア層はAbemaTV云々を抜きに確実に会場に来てしまうのだろう。

年々客足の落ち込みは顕著だが、開幕バブルとワールドカップの余勢を駆った2008年代々木セントラルの名古屋浦安戦が7,081人の観客を集めたことを忘れてはいけない。

就職、転勤、結婚、出産、介護・・・。
9年という時間は生活を変えさせるライフイベントを迎えるには十分だ。

新規顧客獲得も勿論大事だが、色々な要因でフットサルを観ることから離れた元フットサルファンの7,081人にフットサルを思い出してもらうことにもAbemaTVは非常に強力だ。

ネット環境があればどこでも観れるチャネルで定期的な露出の場を持てたことは機会があればまた観に行きたいだったり、懐メロや同窓会感覚でのお久しぶり層にとっても今後大きな力になるだろう。

反面、Fリーグのサイト運営は迷走している。

6/10(土)の10時(開幕戦キックオフの2時間前)にFリーグのサイトがダウン。
2時間後にTwitterでダウンのお詫びを掲載し、18時に限定復旧の報を掲載したが、その後、6/15(木)22時現在までAndroidスマートフォン/タブレットからはトップ画面のタブ(ニュース、試合結果などの項目)が反応しなくなっている。

また、一般発売の6/1よりも3日早い5/29に電子チケットDMM.Eで売り出すことを5/28にリリースしたが、アプリからは検索がヒットせず、ホームページの最下部にある小さなリンクのみからしか遷移できなかった。

電話やメールでのお客様問い合わせ窓口のないチケットビジネスでこのあたりのリテラシーやセンスのなさは閉口ものだし、何を持ってシステム的に正しいと判断できるかの人材がいないのではと思う。
SNSが全盛の昨今だが、そこからの流入先はチケット販売サイトや公式ホームページになるわけでここを抑えられなければ売上や利便性に寄与しない。

公式ホームページ、SNS、AbemaTV、そして会場での現地観戦をリンクさせることがIT活用のキモで、2017年は個体として駒が揃っている。
有名無実化した役職を増やすのではなく、ここを俯瞰的にデザインできるCEO補佐なり報道官をゼヒとも招聘してほしいところだ。
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