2017/10/21(土) Fリーグ第22節 アリーナ立川立飛 
ヴォスクオーレ仙台 1 - 4 湘南ベルマーレ
フウガドールすみだ 2 - 0 アグレミーナ浜松
府中アスレティックFC 3 - 0 ヴォスクオーレ仙台

2012年末の第2次安倍内閣から『アベノミクス』の謳い文句でテコ入れされた経済政策による好景気の結果、今年9月の有効求人倍率が1.5倍を越えた。


就職氷河期と呼ばれ『0.54』という激シブな有効求人倍率と、求人&離職率の兼ね合いでこの業種以外の求人が極端に少ないという理由で自分は2002年にシステム業界に就職した。

それから15年間なんとか働き続けているが、当時はシステム業界を舞台にサービス残業/未払い休日出勤/パワハラ/管理者不在のザ・ブラック会社を描いた『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』という掲示板発のコンテンツが業界あるある(あるいはこれ以上も普通にあるある)として話題になるくらいの無茶苦茶なスケジュールや体制の案件も多々あった(らしい)。

当時に比べて労働環境は格段に良くなったが、今は介護・福祉・保育・飲食などの労働環境の悪化が度々取り上げられるし、仕事=自分自身という方程式で成り立っている一見華やかな報道・広告業界はふと冷静になってみると労働者の時間の搾取で成り立っている感がありありだ。

こと、仕事を進めるうえで通過する一般的な成長サイクルは、

・自分の能力を把握する
・能力に適した仕事の入出力を管理する
・必要な入出力をこなす
・自分の能力を開発をする
・能力も認めてもらう

といったものだろう。
このサイクルを繰り返すことで自分の基本になる『型』が構築でき、その型を活かして複数の事象が連続する応用にも適応できる。

ある程度成熟している業界であればいわゆる『業務経験』という定性的な経験だけでなく、省庁や業界団体が運営し、合格者の質を担保する定量的な『資格』が整備されていて、資格取得へのプロセスが型の構築の助けになったりもする。

どちらが牽引する形になるかはその人のキャリア次第だろうが、一定の年齢を越すと経験を過信して軽んじがちな資格勉強にも経験を知識として定着させる効果があり、やってみると自分のキャリアの答え合わせをしているような感覚で意外と面白い。

なんにせよ『型』を作り、壊し(あるいは壊され)、振り返り、修復し、徐々に強固にしていくプロセスは自分に自信を持つために避けては通れないものだろうし、型の獲得がそのまま自分の武器になるものだ。


『型』という観点でフットサルを観ると特徴的なのが『勝敗の50%はゴレイロで決まる』と言われるゴレイロだ。

カザフスタンのイギータや、元大阪の宮竹選手のようにマイボールから流れの中で持ちあがってパワープレーに参加するような場合を除き、自分のサイズや身体能力を理解した上で、ボールの位置に合わせたポジショニング、ブロック姿勢、相手との距離などを微調整するリアクションが要求されるポジションで、ゴールの中央とボールの直線状に立つことや、手+足/腹/顔で保険をかけて捕球体勢を取ることなど、サッカーとの類似点も多いが、フットサルのゴレイロとしての花形は以下のブロックの3姿勢だろう。

①クロス
上半身を起こして片膝を折り、両手を体側に構え、手のひらを相手に見せて正対する。
1vs1で最も良く見る姿勢で、足は股を抜かれない、手は脇を抜かれないよう隙間をケアしつつ上体を起こして面の面積を稼ぐ。
フットサルのゴレイロというとこの姿勢を連想する人も多いだろう。

面の面積が大きく、両足がフロアに着いているため次の動作に移りやすいのが長所だが、面を作るのに時間がかかることと、再現性に欠けること(不十分な場合は股/脇を抜かれたり、面を作る位置がズレて折った足の上から対角に決められる)が弱点だ。

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少々極端だがクロスの型。
今期嬉しいFリーグデビューを飾った遅咲き苦労人の飛騨選手のウオーミングアップ。


②フェンス
上体を起こしてスライディング+両手を足の上に被せて柵を作り相手のシュートコースをカバーする。
ファー詰めや2vs1カウンターなど早いボールを振られてクロスでは間に合わない場合に対応する型。

勢いをつけて飛びこむので距離を移動しながら面を作れることが長所だが、シュートコースへ体を投げ出すことになるため、ナメてかわされる、止めて見られるなど相手がシュート以外を選択した場合のリアクションに弱い。

また、基本的には股を抜かれないことがゴレイロのイロハのイとしてあり、そのためスライディングは低くあることが必須で、中腰で構えるクロスに比べて高さに欠ける(ファー詰めは浮かせて上を狙え、と言われるのはこの逆説)。

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フェンスの型。
ニアサイドで一度ボールを止めてからファー詰めにフェンスで対応する。


③ダブルニー
クロスの上半身から両膝を前に折って正座の姿勢で膝で滑る型(学校の廊下などの滑る床面で一度はやったことがあるだろう)。
両膝を着くため2次動作の選択が極端に狭まる捨て身技で、この姿勢を取る場合はボールをラインから出す、大きくクリアできることが必須条件になる。

長所はフェンスと同じく距離を移動しながら面を作れることと、姿勢自体が簡単(姿勢を作り切れば股のケアが不要)でフェンスよりも高さと面積が稼げる点。
短所は前述した2次動作の関係で相手のリアクションに弱いことと、ゴールから離れることになるためボールに触れられなかった場合のリスクが甚大なこと。

使い所は限られるがシチュエーションを間違えなければ阻止率は非常に高く、1vs1で相手がコントロールをミスした場面や、ゴール前の混戦でのこぼれ球、セットプレーで裏をかかれた際に一気にブロックに入るなど、出しどころを心得たゴレイロにとっては一撃必殺の見せ場だ。
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はっきりとしたダブルニーではないが、2v1カウンターでパスを出された後の場面。
相手のトラップが乱れたのを確認し、片膝を立てて滑って詰めている。
矢澤選手はこの詰めの判断が抜群にいい。

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名古屋戦では大量7失点を食らったがFリーグ屈指のダブルニーの使い手である府中のクロモト選手。
ここぞの場面で必殺技が出るかがこの人の調子のバロメータ。


上記、クロス・フェンス・ダブルニーの3つの型を股と脇と上体の傾斜を意識しつつスムーズに出せるまで熟練することがゴレイロにとっての型の獲得だろう。

その後は3型の出しどころを考えつつスピードやステップを活かした距離の詰め方や、シュート力を活かして前線に上がってのロングシュートなど各自の個性の上乗せがあり、経験を積むことによる予測や視野の広がりによる判断力の向上がゴレイロとしてのスケールアップに繋がる。


仙台、すみだ、府中、湘南、浜松、名古屋の6チームが集まった立川立飛のハーフセントラルには矢澤(すみだ)、石黒(浜松)のふたり(前身のバンフを含めれば飛騨(府中)の3人)が集まり、リーグ全体を見渡しても小石峯(神戸)や岡島(浜松)など、名古屋トップ/サテライト出身のゴレイロが数多く活躍している。

強シュートを持つ石黒選手、サイズを活かす矢澤選手/岡島選手、安定感の小石峯選手/篠田選手と、在校生、卒業生ともに個性的なゴレイロが多いが、共通するのはクロス、フェンス、ダブルニーの3型が非常にしっかりしていることだ。
(試合展開にもよるが、北海道出身で名古屋在席2年目の関口選手は出足の良さと前目のポジショニングで型を使わず前で処理するケースが目立つのが篠田選手との比較として面白い)
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強シュートを持つ石黒選手と、出足の早さ&反応で勝負する関口選手


日本唯一のプロチームである名古屋だからと言ってしまえばそれまでだが、このチームには型をベースに優れたゴレイロを育成するメソッドがあるのだろうし、各自が違うチームに移っても活躍できるのは自分のベースとなる型をしっかりと身につけられたからなのではと思う。

涼しい顔で繰り出す安定感抜群のクロス
ファー詰めに追いすがる迫力満点のフェンス
居合切りよろしくここぞの場面で飛び出すダブルニー

『勝敗の50%はゴレイロで決まる』と言われるフットサルだが、ゴレイロの面白さはどの局面でどの型を使う(あるいは型ではなく前や反応で勝負する)かの判断にあるのではと思う。

チームの最後尾に構えるゴレイロの面々が、その局面でその型を出した必然性にゼヒ思いを巡らせてみてほしい。

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通常ゴレイロが装着する肘当てを身に着けないフィウーザ選手。
クロス→不要
フェンス/ダブルニー→膝当てがあればよくない?
という高度な判断か。
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今期台風の目になっている湘南。
エースロドリゴの覚醒が数字的には顕著だが、鍛代/刈込/内村/植松選手らのサボらず技術とフィジカルを活かして貢献するレベルの高いアラが攻守の屋台骨を支える。
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湘南の小門選手(25歳)と仙台の堀内選手(24歳)の若手ピヴォ対決。
近いうちに日本代表で再会なんて展開も十分ありそう。
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一気に日本代表のピヴォに定着したすみだの20歳、分厚い体躯で強烈なシュートを放つ清水選手。
山元選手、須藤選手ら海千山千の浜松ベテラン勢に削られてイイ表情。
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今期、戦力の劣る仙台から、勝てるチームのすみだに移籍して頭角を現した矢澤選手。
185cm/75kgのサイズに目が行きがちだが、安定した型と、どの距離でどの型で止めるかの判断が抜群で日本代表選出&出場時間を伸ばしたのも大いに納得。

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来季のホームアリーナになりそうな立川立飛で名古屋相手に0-7のスコアで敗れた府中。
皆本選手のアイソレーションからのドリブルで活路を見出したかったが、Y字プレスの頂点で踊るような鬼ステップで追い込むラファ&吉川選手に大苦戦。