お昼に郵便物の受取にゆうゆう窓口がある郵便局へ。
年末営業で土日にもかかわらず郵便局も通常営業中。

郵便物の受取はゆうゆう窓口でということで並んで待つ。
前には窓口で局員の方と話している女性の方と、30代後半の男性が並んでいて自分は3番目。
順番待ちをしていると前の男性が列から離れ郵便局のほうへ向かう。

『前の女性が時間かかってるから年賀状でも見に行くのかなー』

と思って男性を見ると男性と一瞬目が合った。
すると男性が棒が倒れるように気をつけの体制で真後に倒れた。

男性はピクリとも動かない。
床に横たわる顔を覗き込むと、目は開いているものの黒目が深く、焦点はどこにも合っていない。
倒れた時に頭を打っているので安静にしておくのがベストなのはわかる。
ただ、その先に何をすればいいかがわからない。

無事かどうか呼びかけるべきなのか。
体制は仰向けのままでいいのか。
心臓マッサージ&人工呼吸をすべきなのか(正確なやり方はわからない)。
AEDを使うべきなのか(建物内にあるのかはわからず、あったとしても使い方はわからない)。

一瞬なのか長時間なのかわからない、パニック時特有の濃い時間の中で自分なりにできることを考えた。
郵便局のカウンターに向かって、人が倒れたことと、救急車を呼んでくれるよう叫んだ。とにかく叫んだ。
考えた結果、自分にできることはそれしかなかった・・・。

事象発生時に自分が一番そばにいた。倒れる前にも目が合った。
いよいよ深刻な事態になった場合はなんとも後味が悪い。
『この中にお医者様はいらっしゃいませんか?』
と自分が祈る日が来るとは思わなかった・・・。

すると、ゆうゆう窓口の横にあるATMに並んでいた私と同年齢程の男性が、おもむろに倒れた男性の介抱を始めた。

意識があるかを呼びかけ、男性が意識を取り戻す。
名前の確認、過去にも倒れたことがあるか、朝食を取ったかなどゆっくりと問いかける。
体制を仰臥から、横臥にし、自分が掛けていたショルダーバックを枕に代用し、頭を床と水平に保つ。

局員の方も現場に集まり、倒れてから5分程度で救急車も到着。
ストレッチャーに乗るころには倒れた男性の意識もしっかりし、介抱をした男性に感謝の言葉を述べ車中の人となった。
介抱した男性は局員、救急隊員からも感謝の言葉をもらう。
男性は照れくさそうにはにかんで、何事もなかったようにATMの順番待ちの列に並ぶ。
医療従事者か、応急処置の心得があったのかはわからないが、この人の的確な処置で男性は救われた。

危機に対し冷静に自分ができることを判断し的確に対処する。
この人は、仕事でもなく、日常の用事で訪れた郵便局でそれを実現した。
本当にすごいことだ。
ひょっとしたらご近所に住んでいるかもしれない、名前も名乗らず郵便局を後にしたローカルヒーローに感謝した。