2013/3/17 PUMA CUP全日本フットサル選手権決勝ラウンド 3日目
3位決定戦&決勝戦 代々木競技場第一体育館
◆3位決定戦
エスポラーダ北海道 3-1湘南ベルマーレ
◆決勝
フウガすみだ 3-3(延長1-1、PK3-4) 名古屋オーシャンズ
2013年3月17日。第18回PUMA CUP全日本フットサル選手権決勝。
地域リーグ所属のすみだがFリーグ絶対王者名古屋を相手に3度リードをしての延長突入。
3-4と名古屋リードで迎えた延長後半残り4秒。
キックインに体ごと飛び込んでの太見選手の同点ゴール。
最後は大会を通じて出色のパフォーマンスを見せた諸江選手がPKを外して無念の敗退に終わった。
PKを外して目を腫らす諸江選手にキャプテンの金川選手が駆け寄る。
チームメートが二人を中心に優しく輪を作る光景はなんとも感動的で、ひとしきり悔しがったあとに清々しいやりきった笑顔で準優勝を喜んでくれていたのが本当に嬉しかった。
その横ではこの大会での引退を表明していた木暮選手が佇んでいる。
約半年前にフットサルワールドカップのキャプテンを務め、優勝したブラジル、稀代の天才リカルジーニョを擁するポルトガルと同組ながら、史上初の決勝トーナメント進出を果たす原動力になった日本フットサル界の巨星は、決勝戦を含むトーナメントの3試合とも試合時間を与えられず引退することになった。
試合中はトコトンいやらしく、試合後は底抜けに明るいラファエル・サカイが木暮選手を肩車して場内を一周する。
引退という感傷に囚われず、ただひとりの選手として今日プレイするレベルに達していなかったという判断を下したアジウ監督は素晴らしくフェアで、木暮選手のことをプロとして尊重していたと思うし、そういうスポーツだからこそ木暮選手もフットサルにすべてを賭け、清々しい表情で場内を埋め尽くした観客に手を振っていたのだと思う。
過去最高の5,090人の目を釘付けにした奇跡的な一戦は勝者も敗者もお互いを称え、自分よりもチームメイトを想い、彼らを中心に2つの輪が広がっていく。
半年前にタイで見たワールドカップ決勝以上の濃厚な試合の余韻と、強く、美しい光景に涙が止まらなかった。
すみだ勝利。すみだ引き分け。すみだ惜敗。
Fリーグのチームと対戦する際、とかくすみだが主語として語られがちだ。
Fリーグ勢とこれだけやれるのなら、早くすみだをFリーグに加入させてほしい。
名古屋を破って全日本優勝を遂げた2009年からそう思っていたファンは多いはずだ。
勿論自分もその一人だが、すみだの健闘を望む反面、日本のトップリーグで研鑽を積むFリーグ勢には圧勝してほしい気持ちもある。
今年の全日本、すみだはFリーグの大阪、北海道、名古屋と戦い、十分な内容と破格の結果を残した。
いずれも素晴らしいチームだったが、日本のトップリーグで戦う経験値が選手を、チームを強くしているのか。
降格がなく、日程の半ばで趨勢が見える優勝争いを同じ面子でこなすトップリーグ。
ジリ貧。頭打ち。そんな言葉にひたすらフタをし、喉が焼け、目頭が熱くなるような熱を持ち込めるチームを仲間に加えようとしない。
Fリーグ参入を目指すすみだ。
願いが叶わなくても、今いる場所で全力を尽くし、腐ることなく研鑽を積む姿勢はフットサルに留まらず、学ぶことばかりだ。
そうした継続の結果が熱を呼び、サポーターを集め、選手を育て、組織を強くする。
彼らは自分たちが夢中になれるものを全力で表現している。
ファンに夢を、選手に目標を、競技に愛情を示すのが協会の仕事なのではないだろうか。
彼らの純粋な想いにFリーグ参入というニンジンをぶら下げ、思わせぶりな態度を取るのはあまりに不粋だろう。
東金発(関東予選)、大阪経由(全日本予選ラウンド)、代々木で完結を迎えた彼らの物語は準優勝に終わったが、目指すものがまだあるというのは、彼らにとってハッピーエンドのひとつだろう。
来年、どのカテゴリーで戦うかはわからないが、彼らが追うものの価値を理解していない協会が運営するリーグならこのチームを渡したくない。
会場に集まった5,090人の観客の目を釘付けにした宝物をとにかく大事にしてほしい。