2017/10/28(土) Fリーグ第24節 墨田区総合体育館
フウガドールすみだ 3 - 2 府中アスレティックFC
フウガドールすみだ 3 - 2 府中アスレティックFC
体育館はスポーツをするところだ。
大人になるとなぜかできなくなっている後転を練習した体操用のマットや跳び箱、やたら高く感じたバスケットボールのゴール。
夏はムシ暑く、冬は足先が痛くなるほど寒く、やたら茶色いハコの中はちょっと息苦しい思い出だ。
そんなスポーツをするところだった体育館だが、TVやインターネットなどの普及により、スポーツがコンテンツとして楽しまれるようになってからは『アリーナ』という名称が広く使わられ、やる人よりも観る人に向けての施設が大多数になってきた。
各チームともハーフセントラルを2日間開催することになる今シーズン、府中市立総合体育館が8月いっぱいでFリーグでの利用が禁止になることから、10/21(土)・22(日)の府中担当分のハーフセントラルはリーグ開幕時点ではオーシャンアリーナを間借りして開催されることになっていたが、府中の隣町の立川に10月にオープンするアリーナ立川立飛での開催に変更されることが9/14に発表された。
試合自体は仙台/府中/すみだ/湘南/浜松/名古屋の6チームのキャラクターがギュッと詰まった好ゲームが多かったが、アリーナ立川立飛の床面は観客席から非常に見づらい角度にあり、バックスタンドからは手前のサイドラインが見切れ、ゴール裏からは手前のゴール前が見えないという具合だった。
メインスタンドの中段が全体の把握にはもっとも良さそうだったが、観客席最前列には転落防止の腰高の柵があり、これがまた競技中のフロアへの視界に干渉するというKYぷり。
もっともこの施設自体が、予算を安く、工期を短く済ませるために組み立てが容易な汎用的な資材を調達して施工するという建築方式だったので贅沢も言っていられないというところだろう。
SNSを見るとBリーグのアルバルク東京がホームアリーナとして利用する場合でも同様の見切れ、柵干渉に関する話題が出ているらしく、全席から問題なく観戦できるコンテンツは中央に舞台装置を用意する格闘技くらいになりそうで、意思決定のプロセスはわからないが、自分がやることよりも観られることにフォーカスすべき現代式の体育館が帯に短く襷にも足りなさそうな風体で仕上がったのがなんとも残念だった。
SNSを見るとBリーグのアルバルク東京がホームアリーナとして利用する場合でも同様の見切れ、柵干渉に関する話題が出ているらしく、全席から問題なく観戦できるコンテンツは中央に舞台装置を用意する格闘技くらいになりそうだが、2,000人規模で現実的に使用料をペイできる府中近郊の会場としてはアリーナ立川立飛は及第点というしかないだろう。
煽る気はまったくないが民営管理でお値段相当のアリーナ立川立飛の1週間後に、墨田区が事業主体の墨田区総合体育館に訪れると快適さはある程度お金で保障されることが非常によくわかる。
(もちろんロー/ハイコストとも利用用途から逆算した設計は必要だが、ローコストほど工夫や知恵が必要であり、他の構成要素とのトレードオフになることは間違いない)
コスパという言葉が評価項目の上位にノミネートされる昨今だが、コスパは本来『価格性能(内容)比』を表現する言葉だったはずで、本来の目的を実現するための性能を度外視し、安さのみにフォーカスする安易な意思決定材料として大小様々なところで用いられている雰囲気があるところがちょっと気になるところだ。
こちらがアリーナ立川立飛。
写真中央の赤枠の列が見切れ、柵干渉のない良席。
地域リーグだとありがちな最寄駅から徒歩30分の会場までのアクセス、見切れ席、柵の干渉、冷暖房なしという酷アリーナなだが(これはこれでどうすれば解決できるかを色々考えるのが結構楽しい)、せっかくの機会なのでいいアリーナとは何かを勝手に考えてみた。
①アクセス
マニアにはたまらない酷アリーナ3箇条に入れたが、競技のトップカテゴリーであるFリーグなら駅近(徒歩10分程度/遠方でも敷地へのバスの乗り入れありなら○)が当然望ましい。
もちろん条件を満たさないアリーナもあるが、大分がホーム開催する別府駅から徒歩20分のビーコンプラザは温泉地別府のワクワク感と小高い山を登っていく度に高鳴る高揚感がなんとも言えなかった。
近いに越したことはないが会場までの道のりで地域性を感じられたり、高揚感が高まるような環境であればそれはそれで歓迎だ。
②見やすさ
手前のゴール前が見切れてしまうものの、狭い体育館に響く歓声が集積されるゴール裏の熱気は府中市立総合体育館ならではのものだった。
個人的には一部が見切れていても見切れに代わりうる価値が提供されていれば問題ないのではと思う。
2,500人のキャパを誇るものの見やすさに難点があるアリーナ立川立飛だが、均等にフロアを使うのではなくコートの設置場所をメインスタンドから見やすいようにバックスタンド側にズラしてアリーナを設置、バックスタンドを立ち見として価格差を出すのもアリではないだろうか。
府中市立総合体育館でのホーム開催(ラストゲームの8/19(土)が1,520人)と10月のハーフセントラル2試合(メインイベント感満載の府中vs名古屋が1,217人)を見ると動員は1,200~1,500人の枠内に落ち着きそうなので、2,500人の集客を目指すよりはまずはこの人数の満足度を上げる施策がベターだろう。
府中市立総合体育館でのホーム開催(ラストゲームの8/19(土)が1,520人)と10月のハーフセントラル2試合(メインイベント感満載の府中vs名古屋が1,217人)を見ると動員は1,200~1,500人の枠内に落ち着きそうなので、2,500人の集客を目指すよりはまずはこの人数の満足度を上げる施策がベターだろう。
全員が等しく座って応援する全角度から見やすいアリーナ、というのも理想だが、ライブの醍醐味はそれぞれの楽しみ方でコンテンツを楽しめることだ。
バックスタンドでサポーター同士が応援合戦を繰り広げ、アリーナでは間近に迫る選手の表情に熱くなり、全体が見やすいメインスタンドでは監督の采配や戦術論に花を咲かせ、スペースに余裕のあるゴール裏ではファミリーがゆったりも騒々しくフットサルを見つめる...。
そんな光景を想像するだけでとてもワクワクするのは自分だけだろうか。
Fリーグで一番好きな席種。墨田区総合体育館の選手ベンチ裏に常設されている『スミダイルシート』。
ハーフタイムには愛想のよいマスコットのスミダイルを愛で、試合終盤にはタイムアウト時のボードを覗き込む体験はここならでは。
③冷暖房完備。
酷3の最後の一角。
会場によっては空調の使用料が施設使用料と別立てのところもあり冷房が50,000円/1時間なんて話も聞くが、これについては①②のようにトレードオフになるものがない。
無い袖は振れないだろうが夏場は熱中症などの安全面からも必要な要素なので頑張ってほしい。
④物販
定番どころだとタオルマフラー、レプリカシャツ、Tシャツ、キャップあたりだろうが、モバイルバッテリーやハンドスピナーなんてご時世やトレンドを抑えたものもある。
趣旨を凝らしたチームの物販ブースの前に立っていたらいつの間にか散財していたしていた、という人も結構いるのではないだろうか。
プラス要素のみの入場料収入に比べて、在庫が損益にもつながる物販は人気選手のグッズを作ったのにケガで露出機会が減ったり、移籍でお蔵入りなんてリスクもつきまとう。
個人的に上手いなと思うのがすみだや浦安で、すみだはスポンサーのスーツメーカーのネクタイ(これを須賀監督が清々しく着用)や、お出かけのお供に定着しつつあるモバイルバッテリーを一見スポーツチームらしからぬスタイリッシュなデザインでリリースしている。
浦安は前述のハンドスピナー(定着するかはまだ不透明なので在庫時の損益が若干心配)や、フットサルのサポーターアイテムとしてベースボールシャツ(チームの女子選手にダボッと可愛らしく着させる販促がお見事)など攻めたラインナップが光る。
わかりやすさとしては定番どころがあれば十分だし、グッズの少なさで不満の声があがることは少ないだろうが、無くても我慢できるがあったら便利なもの(モバイルバッテリー)や、話題性があり機会があれば欲しいと感じるもの(ハンドスピナー)はビジネスチャンスとして機を見るに敏で裏方陣の才覚が光る。
⑤スタジアムグルメ
もはやそれ自体が目的にもなる規模のサッカーと比較するとひっそりと営業されるフットサルのスタジアムグルメ。
スタジアム近辺の名店か、スタジアム近辺の土地柄に合わせたものが並ぶことが多い(ブラジル人コミュニティが至近の浜松のブラジルフード(ポンテケーニョやガラナ)など)が、昨・今シーズン衝撃だったのが町田の中井農園シリーズだ。
農業を営むご実家から町田に在席する中井選手が取り寄せた焼き芋に始まり、今シーズンは各種フレーバーを取り揃えてのオシャレな冷やし甘酒を披露。
選手との距離が近いフットサルならではの展開(?)で、寒さが堪えるこれからの時期に新たな施策もありそうだなと密かに期待している。
食事に関しては火を使う、使わないなどで色々と制約が厳しかったり、食中毒等の事故時の評判を考えてあえて出さないチームもあるのではと思うし、1試合開催よりもセントラル/ハーフセントラルなどの複数試合開催日のほうが商機ありなのでそこから限定的にというのもいいだろう。
個人的にはキックインすら4秒以内にこなさなければいけないフットサルを見ながら飲み食いするのはムリがあると思うので、ないならないでまったく不満はない。
⑥トレーニング
やる/観るを両立させた近代型のアリーナをざっと見渡すと、きたえーる、小田原アリーナ、墨田区総合体育館、浦安市総合体育館あたりはトレーニングルームやプールが常時営業していてFリーグ開催日も利用可能だ。
市販されているレプリカウェアを身に着けて試合を観戦し、試合終了後に普段選手たちも使ってるであろう器具で軽くトレーニングをし、おもむろにプロテインをキメるなんてなりきりツアーもまた一興だろう(もちろん自分はやったことはない)。
昨年始まったBリーグは会場ごとに10種類前後の席種が細かく設定されていて、半ば無理やり感があるがそれだけの価値を創出し、提示している(360度カメラから各客席の画像を用意した千葉ジェッツのコンテンツが非常に秀逸なのでゼヒ見てみてほしい)。
個人的に最も手を入れるべきは②の見やすさだと思っていて、長く同じ設営でやってきたホームゲームにも何か新しいアイディアがないかは年に1度でいいのでゼヒ検討してほしいところだ。
個人的に最も手を入れるべきは②の見やすさだと思っていて、長く同じ設営でやってきたホームゲームにも何か新しいアイディアがないかは年に1度でいいのでゼヒ検討してほしいところだ。
体育館はスポーツをするところだった。
今年はAbemaTVでFリーグを観戦する機会が増えたという人も多いだろうが、それでも会場には会場の味や熱があり、他メディアや他競技からのスパイスが活かせることもあると思う。
外部からはわからない制約が色々とあるのかとは思うが、狙いが明確な施策ならファンは納得するものなので『今までこれでやってきたから』の壁を壊してドンドン攻めてみてほしい。
ゴール数は少ないが前線からのプレスと、ボールを受けて時間を作り冷静な判断で好アシストを連発する岡村選手。
フィジカルが強いピヴォというイメージがあったが実際は最前線のゲームメーカー。
岡村選手が作った時間を活かしてゴール前に飛び込み、ダイレクトプレーでゴールを決める宮崎選手。
岡村→宮崎ラインは1stセットの大きな武器。
2点目のゴールは清水&ボラvs皆本という豪華キャストの2v1カウンターからボラがクロモトのニアを抜いて手堅くゲット。
全員が芸達者の緊張感は生観戦ならでは。
トルクメニスタンでのアジアインドアゲームズではクアトロをこなすアラとして奮闘した田村選手がフィジカル自慢の上福元選手をマーク&先制点をアシスト。
清水/田村/矢澤の日本代表組は異国の経験値が余裕に繋がっているなという印象。
毎年新加入やトップ昇格のあるチームで出場時間を伸ばす栗本選手。
諸江/栗本/渡井/清水というテクニックのある3フィクソ+ピヴォの仕掛け担当が明確になれば面白そうな新セットで攻守に奮闘。
こぼれ球から肩口を抜くコントロールショットと、パワープレーからのファー詰めで2ゴールの渡邉選手。
24試合で35ゴール。残り9節でヴィニシウスの持つシーズン最多得点の43点越えが見えてきた。
冷静な判断と時々見せる正確なスライディングが光るマルキーニョ。
右角から中に侵入してフリーで受ける展開でチャンスを多数作ったパワープレーは今後各チームの脅威になりそう。