2017/12/16(土) 関東1部 柏市中央体育館 『懐かしい名前から』
ゾット早稲田 0 - 3 カフリンガ東久留米
リガーレ東京 2 - 7 ファイルフォックス府中
トルエーラ柏 0 - 0 ブラックショーツ
コロナFC/権田 3 - 4 PSTCロンドリーナ

平成の中頃からイキった男子を中心に日本語として定着していった『総合格闘技』のパイオニアでカリスマ的な人気を博した佐藤ルミナ氏の甥がロンドリーナ(関東1部(Fリーグ湘南のサテライトチーム))に所属している。
ながら作業をしながら流していたAbemaTVのキャプションでハッとしてからいつか見に行こうと思っていた関東1部を久々に観戦した。

選手の名前は佐藤玲惟(レオ)。若干20歳。

天性の当て勘による打撃センスと、足関節や飛びつき腕十字などの外連味溢れるサブミッションを武器にするも最後はサイズ差(167cm/65kg)と打たれ弱さに泣いた叔父とは裏腹に、背番号3を背負い強豪チームを引っ張る若武者は178cm/73kgとフットサル選手としては十分なフィジカルを誇り、背中に鉄板でも入っているような好姿勢でフィクソ・ピヴォの位置を戦況に応じて上下動しては馬力十分のがぶりやシュートで半径2メートルを制圧する。
昨シーズン、フロアで絶対王政を振るったアルトゥール(大阪)を彷彿させる活躍は目を見張るものがあった。

リーグ自体は10/28(土)小田原アリーナで湘南浜松戦の後座に行われたブラックショーツとの首位対決の結果(3-4でブラックショーツの勝利)により、独走していたロンドリーナにブラックショーツが肉薄し神奈川の2チームが優勝争いをリードする形になったが、その後はプレッシャーからか両者ともガチガチの試合が目立ち、ブラックショーツは2分1敗、ロンドリーナは1勝1分の軟着陸。
最終節は後ろを追いかけるチームにも優勝の目を残す形になったが、準優勝のブラックショーツに勝ち点3差をつけロンドリーナが昇格1年目で嬉しい初優勝を遂げた。

Fリーグ下部組織勢の関東リーグ制覇は史上初で、来年は町田の下部組織も関東1部に昇格する。
未来ある若者たちにはゼヒここを通過点にFリーグ、日本代表まで駆け上がっていってほしい。

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関東1部を制したロンドリーナの円陣。
フィジカル、テクニックに光る選手が多く、来シーズン、トップに昇格する選手も多く出そう。


今では大晦日にファイターなのかバラエティなのかわからないキャラクターの強い面々が殴り合い、元旦に祖父母と孫がボブサップのコミカルな表情や曙の不甲斐なさを論じるなんて光景も生んだ総合格闘技。

日本におけるその産声はタイガーマスクとして昭和のプロレス史を彩った佐山聡氏が1984年にタイガージムを設立したことに始まる。
ここから打投極(それぞれ打撃技/投げ技/間接技を表し、ダトウキョクと読む)を体系化した日本初の総合格闘技の原型である『修斗(シュウト)』が生まれ、1989年に初興業が行われた。

今ではプ女子(プロレスを愛好する女性ファン)がリングサイドを占拠するようになったプロレス&格闘技も、当時はやる側も見る側も泥臭く、昭和感溢れる野暮ったいアンダーグラウンドな出し物だったが、前述した佐藤ルミナは1994年に修斗デビューし、日本人、外国人を相手に1分けを挟んで破竹の11連勝。

トレードマークの銀髪が似合う精悍なルックスとシャープでセクシーなボディ(人気絶頂期の藤原紀香と噂になったこともある)、当時のバズワードである『裏原』感溢れるストリートファッションを着こなし、サブカルチャーの世界からも引っ張り凧。
既成概念をブチ壊す存在として一気に若者の人気を掴むと、クールでスタイリッシュな新しいスポーツ『総合格闘技』のアイコンになった。

黎明期のアダか当時のリングに彼が適正体重で戦える階級は整備されておらず、1999年、2000年に迎えた実質1階級上のタイトルマッチで2年後輩の宇野薫に2連敗。
人気と華がありカリスマ性を備える佐藤が太陽、堅実な実力がありながらで朴訥で地味な宇野が月に例えられたが、タイトルでは佐藤に目立った光はなく、勝ちっぷりも負けっぷりもとにかく美しい、強烈に記憶に残る選手としてデビューから20年目にあたる2014年に引退を迎えている。


ここからはなぜか大晦日のイベントとして定着した総合格闘技のマイルストーンを追っていきたい。

・1999~2000年:台本のあるプロレスの世界ではスポットライトを浴びなかった桜庭和志が当時世界最強とされていたグレイシー一族(ホイラー・ホイス・ヘンゾ・ハイアン)に4連勝。
既存のプロレスファンへの格闘技の訴求に成功する。

・2000年:橋本真也が『負けたら引退』と銘打ってバルセロナ五輪柔道銀メダリストの小川直也と対戦。金曜日20時からテレビ朝日で中継された一戦は視聴率15%(最高は24%)を記録。
久々のゴールデンタイムのプロレス中継で『格闘技>プロレス』がお茶の間に披露された瞬間でもあり、惨敗した橋本真也を少年ファンが応援してカムバックさせるという後日談も発生。
殺気と温もりが交差するこれぞプロレスという人間ドラマと合わせて異様に濃い一戦になった。

・2001年:これまで紅白歌合戦の独壇場だった大晦日のTV番組に、格闘技に熱を入れ出したTBSがアントニオ猪木と組み『INOKI BOM-BA-YE 2001』と銘打った格闘技興業を放送し、大相撲で小結昇進後、プロレスに転身するるも目立った活躍のなかった安田忠夫がK-1最強の一角、ジェロム・レ・バンナと対戦。
試合前にギャンブルによる借金、離婚などの私生活の暗を抉ったVTRが繰り返し放送される中、格の違い過ぎるバンナをギロチンチョーク葬。
勝利後、娘をリングに挙げて『お父さん、勝ったぞー!!』のマイクアピールと共に笑顔で肩車する大晦日の奇跡にお茶の間が泣いた。
視聴率は大健闘の14.9%(紅白は48.5%(2部) 38.1%(1部))

・2003年:2001年以降からの余波を借り、大晦日に日本テレビが『猪木祭』、TBSが『Dynamite!!』、フジテレビが『PRIDE 男祭り』を開催・放送する異常事態に。
Dynamite!!ではCDデビューも果たし、バラエティ番組でも機知に富んだ受け答えで人気者になったボブ・サップと元大相撲横綱の曙が対戦し、曙の何もできないやられっぷりが新年の話題をジャック。

・2006年~2007年:TBSが強烈にプッシュした亀田3兄弟がボクシング界を席巻。
グレイシー一族を模した入場、ボブサップを彷彿とさせるコミカルとシリアスが融合した対戦相手の挑発など、21世紀型格闘技放送の美味しいところをつまんでブランディングした演出で人気を博した。

3兄弟とも競技者として一定のレベルを越えていたと思うが、結果を出すことがストーリー存続の絶対条件という大人の都合上、東南アジア・中南米からいわゆる『噛ませ犬』と組んだ試合で戦績を稼ぎ、不可解な判定での王座獲得や、負けが濃厚になった試合で露骨にラフファイトに走るなど、徐々に彼らのキャラクターを支持していたお茶の間の視聴者からのヘイトが重なり、いつの間にか飽きられて終わった。

・2007年~2015年:2006年、PRIDEを地上波放送していたフジテレビが、PRIDEが反社会的組織と関わりの疑いありということで放送中止。
2000年代は日本(PRIDE)とアメリカ(UFC)で人気のある総合格闘家と契約するためのファイトマネー・バブルが発生しており、ファイトマネーを支払えなくなったPRIDEは2007年に消滅。
その後は『HERO'S』『戦極』『DREAM』などの団体が生まれては消える冬の時代になる。
この時期は長谷川穂積(世界王者防衛10回)、内山高志(同11回)、山中慎介(同12回)らのボクシング勢や、女子レスリングなどの古参競技の話題が目立った。

・2015年:PRIDEを運営していたスタッフが再集結し、視聴率低迷に苦しむフジテレビと組んで『RIZIN』を立ち上げ、2010年の『Dynamite!!』から5年ぶりに大晦日の格闘技地上波放送が復活した。
PRIDEで活躍したネームバリューのある選手を中心とした『昔の名前で出ています』なマッチメークで初期を凌ぐも、冬の時代ににわかに盛り上がりを見せていた『女子』総合格闘技の実力者、RENAが立ち上げ戦から5連勝とブレイク。

かわいらしいルックスに不釣り合いなエゲつない打撃を武器に人気を集め、7,732人を集めたマリンメッセ福岡では男女混合の試合構成ながらメインイベントに抜擢され、試合もキッチリKO勝ち。
大阪から上京し、BEAMSの倉庫でアルバイトをしながら練習を続け小さな興業からコツコツと実績を積んだという経歴もなかなか味があり、若者が好きなことを見つけて努力し、工夫し、もがき自己実現をする姿はオーソドックスながら無性に応援したくなるものだろう。


選出に個人的な趣味はあったが、総合格闘技がコンテンツとして定着した理由は以下なのではないかと思う。

①親和性のある他競技からの有名選手の登用
②人間味溢れる選手のキャラクター
③悲喜劇のどちらにもわかりやすいストーリー
④時流

①小川直也や曙(彼らは③④も兼ねる稀有なタレント)らはもともと取り組んでいた競技でも実績十分であることから、彼らの強さへの興味とワイドショー的なネタの両方が提供可能で、普段格闘技を見ない人にも食いつかせることができる存在だった。
大晦日興業ではボビー・オロゴンや金子賢らのイロモノが登場することもあったが、どれも単発でその後のインパクトが薄いことからも単純なタレントではないアスリートの存在が鍵だったのだろう。

②キャラクターと聞いて真っ先に思い浮かぶのがボブ・サップだ。
一般的に格闘家といえば強面の印象が強かったが、試合前のコミカルな煽りが話題となってバラエティ番組に出演すると、意外にも知的さとユーモアがあり、一躍時の人になってCDデビューまでしてしまう。
格闘家というパブリックイメージに反するギャップが人気の秘密で、リング外で虚勢を張らない姿勢はなかなか好感が持てた。

③は何といってもバンナ戦で涙を誘った安田忠夫の大逆転ストーリーだろう。
相撲取りからプロレス転身後、目立ったチャンスがないことに不満を持って格闘技に挑戦した冴えないオッサンというイメージだったが、相撲廃業後のギャンブルによる借金、離婚というイメージ以上のなんだかなっぷりから、超格上のジェロム・レ・バンナに勝つという乾坤一擲の大逆転に泣いた。

オラつきだけでない家族愛を見せた亀田兄弟もそうだが、密着してみると表面のイメージだけでないものが見え、それが結果に対する共感を何倍にも増してくれる。

④2001年から2010年まで大晦日に大規模な格闘技興業が実施&放送されたが、それまで大晦日の国民行事だった紅白歌合戦の視聴率が徐々に落ちてきたことにより『打倒紅白』の機運が高まった当時のTV業界も背景にある(正攻法では牙城を崩せないため、例年各局とも実験的な番組を当てることが多い)。
結局、健闘はするものの紅白に視聴率で勝ることはなかったが、話題・露出という面では最高のシチュエーションだった。


メインテーマのフットサルでこの4点を考えるが、④についてはスマホが普及し、映像コンテンツをマルチデバイスで見るようになった今、AbemaTVがついてくれたのは僥倖だろう。

今後に期待したいのは②③で、試合後のデジッチではどのチームもコミカルな寸劇を流しているが、より選手の実生活に突っ込んだものを取り上げるのはどうだろうか。

若くしての引退、300人を切る観客数、専門誌の廃刊などネガティブなニュースが続いたフットサル界だが、それでも一番の宝は魅力的な選手たちで、ファンはクリニックで接する人当たりのいい応対しか知らないのではと思う。

オシャレでスタイリッシュだと思ったフットサル選手が試合の次の日には7時に起きて仕事に行っていたり、年間スケジュール発表と合わせて有給申請が通るよう同僚たちと調整するというのもなかなかシブイ絵になだろうし、親(あるいは義親)や嫁から諸々の犠牲を強いて好きなことを続けていることの小言を浴び、それでも試合後に応援してくれた子供を抱くのが幸せだ、なんてストーリーはちょっと心にくるものがある。

強くて上手くて速くて競技への愛着もある面々が試合後に喜怒哀楽を爆発させる光景はどのスポーツでも最高のカタルシスだ。

その選手が背負う背景がわかればより共感、感動できるのではと思うし、選手にとっても勝手なイメージではない自分を知ってもらうことは競技者としても、ひとりの社会人としても嬉しいことなのではないだろうか(アメリカでも総合格闘技が人気でファイトマネーが日本以上になっているが、そのキッカケは格闘家の卵たちを集めて共同生活させつつ練習→デビューを目指すというTV番組のリアリティショーが人気になったことからだった)。

2017年もあと1日だが、例年通り紅白とガキの使いと格闘技をザッピングするダメな大晦日を過ごしつつ、フットサルに賭けた選手たちが送るプレーオフの熱戦に期待したい。