2016/8/20・21・23 タイランド5 バンコクフットサルアリーナ
タイ代表 2 - 2 日本代表
日本代表 0 - 9 カザフスタン代表
イラン代表 4 - 2 日本代表

タイのバンコクフットサルアリーナで行われたタイ、イラン、カザフスタン、日本の4ヵ国代表対抗戦。

来年5月に予定されるアジアの20歳以下の大会に向け、19歳以下の選手と、各国とのバランス調整約の皆本選手、仁部屋選手の構成で挑んだ日本は、アジア、欧州の強豪のフル代表を相手に1分2敗、4得点15失点で4ヵ国中最下位という結果で幕を閉じた(最終順位はカザフスタン/タイ/イラン/日本)。

熱狂的なサポーターが後押しする地元タイとの1戦目は皆本選手&植松選手、仁部屋選手&清水選手を軸に2~3分毎の7交代で回し、

皆本/植松/宇田川/脇山
皆本/植松/伊藤/山桐
皆本/植松/宇田川/山桐
仁部屋/清水/小幡/松原
仁部屋/米田/松原/山田

の5通りの組み合わせで前半を1点のビハインドでしのぐと、後半早々に仁部屋選手が得意のサイドからのスラロームでシュートを決めて1-1の同点に。

ここからは鈴木監督がギャンブル。
 
前述の皆本選手&植松選手、仁部屋選手&清水選手を起点に両セットを構成した選手を、

仁部屋/小幡/伊藤/宇田川
仁部屋/清水/小幡/伊藤
仁部屋/小幡/宇田川/山田
皆本/植松/米田/脇山
皆本/植松/山桐/松原
皆本/植松/脇山/松原

のように入れ替えつつ試合を進めるも、引き分けが見えた後半38分のタイのタイムアウト後にプレスの位置が下がり出足が遅れた隙にミドルシュートを決められて2-1。
このまま敗戦かと思われた終盤に、皆本/植松/仁部屋/清水のFリーグセットを送り込み、コーナーキックからのこぼれ球を清水選手が蹴りこんで勝ちに等しい2-2のドローを手にした。

カザフスタンとの2戦目はカザフが欧州3位の実力をまざまざと発揮。
 
1分と経たないうちにカザフのメインキャストの一人であるドウグラスのドリブルからのシュートパスをエベルトンが押し込んで先制。

ここからは練度の高い前プレ、第2PK付近からのキックインのデザインプレー、カザフの皇帝、レオの見事なミドルシュートと前半で一気に0-4のビハインドとなり、後半も似た形での失点が続く。
終盤はカザフの監督がベンチから大声で指示を送っての第2PK付近からのキックイン、フリーキック、コーナーキックの練習相手といった格好になり0-9の大敗で終わったが彼我戦力差を考えれば納得の結果で、過度の悲嘆は欧州3位のカザフスタンに失礼だろう。
 
この試合では3戦で唯一、植松/宇田川/清水/山桐、米田/伊藤/清水/松原、米田/宇田川/伊藤/松原といったU19オンリーのチャレンジングなセットを約2分づつ試しており、この時間の経験も大きな糧にしてほしい。

1日空いての3戦目のイラン戦は前半で3点のビハインドも、全メンバーを使った前2戦と異なり、出場するメンバーを絞って明確に勝負に行く。
(前後半で仁部屋選手が7分間出ずっぱりの時間があったり、米田選手、山桐選手は出場時間がなく、小幡選手、脇山選手はピンポイントの起用に留まった)

後半半ばに4-0とされるも、仁部屋選手がPKを決めて1点を返し、皆本選手のプレスから清水選手が決め、残り約10分で4-2と追いすがる。
ここからは過去2戦ともメンバーを固定して長時間選手を出場させるイランの強度が落ちる時間ということもあり、日本が押し込む時間が続いたが残り1分を切ってからの皆本/植松/仁部屋/清水/松原のパワープレーも実らず4-2のままタイムアップとなった。

1分2敗、4得点15失点で4ヵ国中最下位。

得点者は来年5月の大会には出場しない仁部屋選手が2得点で、フル代表でも実績のある清水選手が2得点。
失点はプレス回避の中途半端な選択を狙われてのカウンターや、集中力を欠くタイミングでラインが下がったところでのミドル、経験不足故に対応できなかったデザインプレーがほとんどでフットサルの教則本に出てくるありがちな得失点のパターンばかりだ。
(擁護するわけではないがこの結果を不甲斐ないと断ずるのであれば、選手ではなくフル代表に対してU19中心で挑むと判断した大人たちにこそある)

結果としてはタイ戦のドローが光ったヤングジャパンだったが、欧州、アジア列強のフル代表を相手に傍目には無茶苦茶な構成で挑んだ総決算となるイラン戦の残り10分間にこそ大いに可能性を感じるものがあり、この時間に主軸の4人と共にフロアに立ち、あと一歩でイランゴールを破るところまで迫った宇田川選手、伊藤選手、松原選手、山田選手は悔しさと共に大きな自信をつけたのではないだろうか。

Fリーグには試合に挑む12名のうち23歳以下の選手を1名以上登録するレギュレーションがある。
登録するものの出場機会がないチームもあるが、すみだ、名古屋、大阪、町田など上位のチームは23歳以下の選手が活躍しており、チーム内の新陳代謝も顕著でそれが順位にも反映されている。

選手が多く、アンダーカテゴリーが整備されている海外であれば18、20、23歳と個別にリーグが運営されている国もあるが、Fのサテライトチームが所属する地域リーグを見ても年間10数試合程度で実戦の場は非常に少ない。
過去には23歳以下の選抜チームでFチャレンジリーグを戦ったこともあるが現在は廃止されており、Fリーグ本戦に出場してこそ得られる経験値の比重は非常に大きいだろう。

一見頼りなさそうに見えても、若さゆえの勢いと創意工夫でなんとかしてしまえるのが若者の特権だ。
ミスをカバーできるのがチームスポーツであり、未熟な少年を助けるのが先輩の役割であり、今、フロアに立つトップランナーが過去に先輩から送られた薫陶なのではないだろうか。

『かわいい子には旅をさせよ』という言葉もあるが、Fリーグを指揮する監督たちには2分間だけでもいいので彼らにフロアに立つチャンスをあげてほしい。
その2分間の旅で感じる悔しさや自信の先に彼らと『リスタート』と銘を打たれた日本フットサル界の未来が待っている。

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タクシーでの移動となるバンコクフットサルアリーナ。
バンコク中心からのアクセスはタクシーで2時間は見ておきたい。
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12,000人収容の立派なアリーナも運営は手作業。
インターバルで意匠に富んだセンターサークルをお手入れ。
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悔しい思い出になった両ゴレイロ。
3戦出場した大分の岩永選手と、カザフスタン戦に先発も無念の途中交代となった北海道の坂選手。
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期待通りの活躍を見せたオーバーエイジ組。
皆本選手の気合の入ったチーラからのガッツポーズと、仁部屋選手のドリブル突破はタイの観客を沸かせた。
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フル代表にも選出されている清水選手と植松選手。
2ゴールを上げた清水選手の結果が光ったが、植松選手も攻守で当たりの強さを披露。
最終戦のイラン戦ではドリブル突破で再三決定機を演出した。
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今後のU19の中核を担うであろうNo7宇田川選手、No8伊藤選手、No13松原選手、No14山田選手。
万能型のアラの宇田川選手、伊藤選手はプレス、カウンターからの攻守が光り、松原選手は驚異の運動量での上下動を見せ、山田選手は左利きを活かしたドリブルでアクセントを作った。
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こちらはカザフスタン戦での米田/伊藤/清水/松原のU19オンリーセット。
刺激を与え、変化を促す。鈴木監督の選手を飽きさせないマネジメントには見るものが多い。
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タイ戦ではアフタープレーで看板に激突した名古屋サテライト所属の松原選手。
アラの運動量と枚数で勝負するトップでも機会があれば十分やれそう。
右眉の傷は献身的なアラの大きな勲章。気合の入った坊主頭も◎。
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カウンターから惜しいシュートを放った伊藤選手。
ここ2シーズンほど若手育成に成功する町田でチャンスをつかみたい。
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タイ戦では出場機会を確保したものの、勝負のイラン戦では出番に恵まれなかった小幡選手。
所属する北海道で巻き返しなるか。
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試合中、仲間を鼓舞する声が非常に目立った清水選手。
アジアを代表するピヴォになる資質は十分。
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1分2敗、4得点15失点で4ヵ国中最下位という結果で幕を閉じたヤングジャパン。
涙と笑いがあり、仲間と応援してくれる人達がいて、悔しいことも沢山あるけど振り返ったらきっと楽しい。
彼らの長い旅はここから。
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カザフスタンのエース。
守備、組み立て、ゴールと冷静なマルチロールを見せるフィクソのレオ。
イラン戦では相手の執拗な挑発にブチ切れ表に出ろとアピールし、タイ戦では終了数秒前に同点になるオウンゴールを喫するも負けなければ優勝ということもあり、タイムボードを指差したあとに歓喜のダンス。
群を抜く才気とヤンデレ風味な狂気を見せる華のある選手。
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同じくカザフスタンのドウグラス。
ブラジル帰化選手の多いカザフはレオかドウグラスをフロアに入れて現場を仕切る。
こちはブラジル人らしくない真面目で優秀なサラリーマンといった雰囲気。
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この旅のお目当て、欧州選手権で3位に輝いたカザフスタンの立役者、ゴレイロのイギータ。
ゴレイロながら流れの中からパワープレーに参加して強烈なシュートで好機を演出。
このチームへの前プレはゴレイロも考えての詰将棋。
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ワールドカップ直前にタイ代表監督に就任した元日本代表監督、ミゲル・ロドリゴ。
テクニックと機転に富むアラ、攻守に実直なフィクソ、強力なピヴォが揃うタイは監督として非常に面白そうなチーム。
口角をキュッと上げるいい笑顔はタイでも健在。
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タイのエースでありアジアを代表するピヴォ、9番のsuphawut。
強烈なFKと、浮球のボレーで得点王とMVPをダブル受賞。
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こちらはいつ休んでるのかがわからないほど試合に出ずっぱりなイランのエース、ルズバハニ。
イラン選手らしい分厚く、柔らかな肩から臀部のラインを活かしてボールをキープし、華麗なドリブルと強烈なシュートでゴールを決める。
イラン選手のクオリティの高いプレーと鍛えられた体、エキゾチックな容姿は日本でよく見かける『イケメンコンテスト』 が陳腐に感じるほどにセクシー。
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試合終了後、アリアンツ・アレーナを彷彿とさせるバンコクフットサルアリーナのライトアップ。
輸入も輸出も少なく、とかくドメスティックになりがちなマイナースポーツであるフットサル。
フットサルを通して各国の文化を感じられる素晴らしい3日間でした。