2016/11/26(土) 国際親善試合 MFP味の素スタジアム
ファイルフォックス府中 5-4 トルクメニスタン代表
※こちらからの続きです:2016/11/23(水) 国際親善試合 郷土の森府中市立総合体育館 『外国人の視点』
2016年11月17日~11月30日までの14日間日本に滞在するトルクメニスタン代表だが11/27(日)が唯一のオフとのこと。
東京近郊での行きたい観光スポットを選手に聞いたところ、意外にも忠犬ハチ公のエピソードにいたく感動したらしく渋谷のハチ公像を見たいというリクエストが多いらしい。
試合中はファイター気質の選手が目立ち、テンションの高い一対一で勝負する彼らだが、衣食住には困らず自然も豊かで鎖国状態の牧歌的な国が儒教的な感覚を持っていたとしてもあながち驚かない。
どこかで見た今風な若者たちがたむろするスポットで、主人の死後も彼を待ち続けたハチ公を尊敬してトルクメニスタンの若者たちが集合写真を撮っている様子を想像し、ちょっと微笑ましい気持ちになってしまった。
先制されるも粘り強い守備と少ない攻撃の手札で勝ちを拾ったリガーレ東京との初戦。
前後半開始時の集中力のエアポケットを一気に突かれ、終始主導権を握られてクローズされたすみだとの2戦目。
中2日の3戦目は関東1部のファイルフォックス府中。
プレス&カウンターもあり、フロアに人を広く配置してから縦パスを機に一気にラッシュする定位置攻撃も強力。
セットプレーやパワープレーにも見る物が多く、今年の関東1部リーグを準優勝した引き出し豊富なフットサルらしいフットサルをするチームを相手にどんな試合になるのかが非常に楽しみだった。
試合はすみだ戦と同様、集中力を欠く前半早々にキックインからのチョンドンとカウンターで2失点。
すみだ戦と同じく立ち上がりにフワフワする悪癖でビハインドを負うも、ここからトルクメニスタンが厚みのあるフィジカルを活かしたディフェンスで盛り返し、強烈なシュートと突進→切り返しに迫力のあるドリブル突破を活かして同点に追いつくと、ボールカットから3人が駆け上がっての3v1カウンターを決めて前半を2-3のリードで終えた。
後半、オフェンスに過重したファイルのボールをいい形で奪うとそのまま2v1のカウンターに出る。
これを手堅く決めて2-4としグッと勝利を引き寄せたかに見えたが、2点のリードの余裕でこれまでのテンションが緩んだのか、ここからディフェンスラインが下がり、相手に強く当たれなくなると徐々にファイルペース。
サイドから入れられたボールをクリアしきれずにボールがパチンコ式にゴールに収まる形でのオウンゴールで3-4。
残り8分過ぎからファイルがパワープレーを始めると、不慣れなディフェンスを早々に攻略されて4-4の同点。
その後もファイルがパワープレーを継続すると、終了間際に素早い動かしで作ったズレを活かしてファーからのシュートを決められて5-4。
後半に作った2点のリードの甘みはどこえやらのホロ苦い敗戦となった。
後半に作った2点のリードの甘みはどこえやらのホロ苦い敗戦となった。
今シーズンは準優勝に輝いたものの、一昨年は優勝、昨年は9チーム中8位で関東2部との入れ替え戦という落差の大きいシノギを余儀なくされたファイル。
昨シーズンはセット間の温度差と、試合中に激昂する吉成選手兼監督の姿がチームの状態をよく表していたが、この日は後半に試合中に頭を打って退場した西川選手を全員が気遣う。
なかでも印象的だったのが、FPでは最年長の吉成選手兼監督が内容はアツいものの、です/ます調の丁寧な言葉使いでメンバーに指示を与え、その指示を各自が真剣に話を聞いていたことで、昨年との結果や温度感の違いはここに集約されているように見えた。
今シーズン、Fリーグから復帰した藤本選手、三木選手、曽根選手がトップカテゴリーでのスキルと経験をチームに還元しての好成績とも取れるが、チームの得点は10点の町田選手がトップで、以降は吉成(9)、三木(7)、西川/丸/小原/藤本(5)、曽根(4)、長尾(3)、田辺(2)、江良/真部/三ヶ尻(1)と満遍なく続いていることが示すようにチーム内のバランスは非常に良さそうだ(もちろん3選手の経験、スキルがバランスの構築に大きく貢献していると思う)。
チームは生き物であり、1シーズン、1試合という単位だけでなく、試合中の得点差/ファウル数/出場メンバー/時間帯で必要なスキルや情報は大きく異なる。
各場面で適切なコミュニケーションは毎回異なり、どういった雰囲気作りや声掛け、姿勢を示すかも監督が考えなければならないタスクだ。
後半2-4にされてからチグハグになったトルクメニスタン代表攻略戦でメンバーに指示を与え、猛追、逆転した吉成監督の手腕はお見事で、2失点を逆転して2点を勝ち越しも、徐々に盛り返されてパワープレーで敗戦というフットサルらしい難ゲームを体験できたことはトルクメニスタンも嬉しい悲鳴だったろう。
細かい例外はあるがフットサルは、
①プレスラインの設定とプレス回避
②トランジションの強度
③練度とキャラクターのある2セット
④キックイン、フリーキック、パワープレーなどのデザインプレーの攻守
の4点のどこかで相手を上回って多くゴールを決めたほうが勝つスポーツだと思う。
3戦だけだがトルクメニスタン代表を評するなら、
①プレスが利いている時間もあるが、プレス回避はまだまだ。
②攻撃→守備の切り替えとボール奪取までは◎。
守備→攻撃の切り替えは△だが、各局面で何人まで人数をかけるのかを検討中といった感じでドリブルでの持ち出しはかなり迫力がある。
③3セットでのローテーションを採用。
どのセットも2人以上の連動での攻撃は非常に少ないが、1試合で数回はよい形も見せ、ポテンシャルはありそう。
④強シュートと体格を活かしてのブロックを駆使したキックイン、フリーキックの攻撃は◎。
パワープレーディフェンスは△で、リードを奪ってもここがお留守だと強豪相手には絶対に勝てないので直近の必修科目か。
パワープレーオフェンスは今後の他戦術の習熟度を見ながら練習時間との相談になりそう。
となり、率直に言って関東1部の中位~下位程度の実力だろう。
だが、AFCではベトナムが日本を破ってワールドカップに出場し本大会では決勝トーナメントに進出、史上最強との呼び声もあった日本を敗者復活トーナメントでキルギスが2-6で敗るなど、継続的な強化(あるいは強化の不足)や勝負の波はどんな結果を生んでも不思議ではない。
そしてトルクメニスタン代表は2017年9月に同国で開催が予定されているアジアインドアゲームズまで、日本から派遣された中村氏、前川氏の指導の元、継続的にトレーニングキャンプや親善試合をミッチリ続けていくとのことで、短期間で一気に伸びる可能性は大いにある。
日本では名監督と聞くと試合中に絶妙な選手交代や、奇抜な采配でゲームを動かす勝負師を連想しがちだ。
だが、最も大事なのは自分が率いるグループに今何が必要かを考え、各自が理解し、納得して行動できるように伝え、人間関係を構築していくことで、『妙手』や『奇手』はあくまでその過程で生まれたものでしかない。
2016年2月のAFC敗退し、10月にブルノ・ガルシア氏が代表監督に収まったが数回の選考合宿が組まれただけで、JFAがリリースしたスケジュールでは2017年に国内で日本代表のお披露目の場はなく、3月の2週間の海外遠征と6月の1週間の合宿後に9月のアジアインドアゲームズに向かう。
ワールドカップで3位に輝いたイランがロシアを相手に親善試合を行い、タイ、ベトナム、オーストラリアを含むワールドカップに出場したアジアの列強がAFF(ASEAN諸国を集めた地域大会)の連戦を戦うなど、各国が勢力的にトレーニングマッチを行っているのに対し、自称イランのライバルである日本の強化日程は非常にお寒いもので、こういうスケジュールについても代表監督は(常識的に結果を出せるプランではないのですでに言っているかもしれないが)ドンドン文句を言っていってほしい。
3/23(木)~4/4(火):海外遠征(未定)
5/30(火)~6/4(日):トレーニングキャンプ(兵庫)
9/17(日)~27(水):アジアインドアゲームズ(トルクメニスタン)
10/16(月)~18(水):トレーニングキャンプ(未定)
11/1(水)~11(土):AFC フットサル選手権2018予選(未定)
日本には色々なタイプの優れた選手がいる。
試合展開、パーソナリティに合わせたアプローチができる優れた監督もいる。
惜しむらくは彼らが国際経験を積む舞台が非常に少ないことで、アウェーでの戦いは勿論大事だが、自分のナショナリティを再認識し、代表選手としてのプライドを育てる国内での親善試合も絶対に必要だろう。
国外から優れた指導者を招聘し、海外武者修行に励むトルクメニスタン代表はかつて日本が歩いた道程だろうし、国を挙げて強化に励む彼らが2020年、2024年のワールドカップ出場を賭けた戦いで日本に立ちはだかる可能性は決して低くない。
海外からの観光客が増え、彼らの指摘の元、当たり前のものとして見飽きていた日本の良さ、悪さを我々が再認識するということがままある。
・選手たちの謙虚さ
・監督と選手の信頼関係
・タイプの異なる対戦相手との腕試し
・協会からの適切なバックアップ
・監督と選手の信頼関係
・タイプの異なる対戦相手との腕試し
・協会からの適切なバックアップ
ベトナム戦、キルギス戦で特に顕著であり、AFCで顕在した日本のウィークポイントはもちろんどのチームも潜在するものだが、それを埋めるためのアプローチをする時間や機会は絶対的に足りていない。
昨年のAFCを名古屋が制し、その名古屋を今シーズンは大阪が圧倒している。